「僕は阿波野を…」西崎幸広氏が語るライバル像、目指したピッチングとは

1年目の15勝で「これはちょっと自分でハードル上げちゃったなって(笑)」

 大学の所属リーグこそ違えど、互いに全国に名を轟かせたエース。大学時代から交流はあり、プロ入りした後も、互いが先発する時は「頑張れよ」とエールを送る仲の良さだったという。少し意外な気もするが、それでは当時の西崎氏を奮起させたのは何だったのか。それは、同じチームの全先発投手の存在だったという。

「他の先発投手は全員ライバルだと思っていました。だから、誰かが勝つと『あの人が勝ったんだから俺も』って気合が入りましたね。やっぱり、年間何勝したとか数字に出る。誰かに先に2桁勝利一番乗りなんてされたら『俺はそれより多く勝つぞ』って思ってましたね」

 新人王争いに名前が挙がったのも、同チーム内のライバルより1つでも多く勝ちたいと奮起した結果でしかない。新人王獲得が目標ではなかったという西崎氏は、入団当時に思い描いていたプランを明かしてくれた。

「僕のプランでは、1年目は8勝、2年目10勝、3年目12勝と、だんだん増えていくイメージだったんです。それで、4年目に15勝できるくらいで上がっていければいいかな、と。それがいきなり15勝しちゃったから、2年目どうしようかなって思いましたよ(笑)。だって、2桁10勝してもダウンですから、内容的には悪くなっている。これはちょっと自分でハードル上げちゃったなって思いましたね(笑)」

 とは言いながら、2年目も15勝11敗、防御率2.50の好成績を収め、同僚の松浦宏明、西武の渡辺久信と並び、最多勝のタイトルを獲得した。瞬く間にエースの座に駆け上がり、周囲から大きな期待を寄せられる存在となったが、「チームがいかに勝つか、ということしか考えていなかった。その勝ちに自分が貢献できていればいいと思っていた」という。自身に対するプレッシャーを感じることはなく、むしろ「周りが西崎が投げる時は勝たないといけない、という雰囲気に持ってきてくれていたと思います」と感謝する。

「エースが投げる試合で負けると大型連敗になってしまう。だから、エースが投げる試合は絶対に勝たないといけないって、周りがそういう状況を作ってくれました。その中で、僕は『自分のピッチングをしておけばいいや』っていう方が大きかったですね」

「年間を通して防御率4.50の投手がいいかって言ったら…」

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