今季は二塁専念? それでも大きな西武外崎のユーティリティ選手としての価値
ユーティリティ選手として破格の打力、昨季も三塁・中村の不調をカバー
ただこのように内外野を一定のレベルで守ることができる選手はNPBでも決して少なくはないはずだ。外崎がそうした選手と大きく異なるのは、ユーティリティ選手としては破格の打力を有している点にある。
出塁率と長打率を足した値で打者の総合的な攻撃力を表すOPS(On-base plus slugging percentage)で見ると、昨季の外崎の値は.830。これは三塁、左翼、右翼といった高い打力が求められるポジションでもリーグ平均以上、二塁手としてはチームの大きな武器になるレベルの数字である。
昨季、複数ポジションを守ることができ、なおかつ高い打力を有する外崎の長所がチームを救った時期があった。開幕直後、西武はスタートダッシュには成功したものの、主砲・中村剛也が極度の不振に陥り三塁手の攻撃力が低迷。中村は調整のため、4月22日に登録を抹消されることとなり、空いた三塁には右翼で出場していた外崎が入ることになった。
イラストは昨季の西武三塁手の直近10試合ごとの成績を集計し、その期間のOPSの推移を表したものだ。シーズン20試合目終了時点であれば、11~20試合目の成績を集計している。このグラフの場合、その時点での三塁手の打撃成績の波を表していると考えてもらえばよい。
開幕直後、西武の三塁手のOPSはリーグ三塁手の平均を大きく下回り推移していた。しかし中村が抹消され外崎の三塁手としての出場機会が増えた4月後半からグラフは徐々に上昇。外崎自身も調子を上げ、中村不調の穴をふさぐことに成功した。
その後、中村は6月1日に復帰すると徐々に調子を取り戻し、7月以降は25本塁打を放つ素晴らしい活躍を見せた。外崎がいなかった場合、チームはいつになるかわからない中村の復調を待つか、大きくレベルの下がる三塁手を起用することになっていただろう。外崎のユーティリティ性により、三塁手に生じた穴を最小限にとどめることに成功したのだ。
昨季、西武が序盤に良いスタートを切ることができた要因は、山川穂高などが打力で他球団に圧倒的な差をつけたことが大きい。しかしこのように他球団に差をつけられないよう、弱点をふさぐ選手起用も快進撃を支えた。