【長谷川滋利の目】「アメリカなら告訴」― 球数制限は子供たちが犠牲にならない野球界へ

「3、4時間の練習でも絶対にプロのレベルには到達します」

 ようやく「球数制限」が形となったが、まだまだ日本では一人でマウンドに立ち、疲労困憊の中で投げる姿が美談として捉えられることが多い。

「少しずつ無くなってはきているが、現状はそれほど変わってない。将来有望な選手が早ければ中学生で消えることもざらにあると聞きます。アメリカであるように、一度そういった(告訴する)人が出てきてもいいかなと。必ずメディアで取り上げられますし、それぐらい注目されれば考え方も変わってくるでしょうね」

 ただ、一方では選手層の厚い強豪私学と推薦などを取らない公立校の違いもあり、「球数制限」の導入には「不公平になる」との声も挙がっている。それでも、長谷川氏は“その声”を一刀両断する。

「プロ野球を目指す選手は数%しかいない、という人もいますが、そうじゃない。将来的に野球をやらない人なら肘や肩をケガしてもいいのか、ということです。私の周りにも高校時代のケガで肘が曲がらない人もいます。肘が曲がらない、肩が上がらないことで仕事ができなくなる人もいます。手術して直した場合の費用は個人負担でしょ? 昔の話として終わらせること自体がおかしい」

 高校野球のあり方を再認識する必要もある。近年では2、3時間で効率のよい練習方法を実戦し、甲子園に出場する高校も増えてきた。一方、早朝から授業を挟み、日が落ちてもまだ練習を行う高校も存在する。

「本来、学生の本業は学業です。私の時代の強豪校は猛練習が当たり前の時代。他の人は『それがあったからプロになれたんでしょ?』と言われるかもしれないが違う。プロになるのは少し遅れたかもしれないが、3、4時間の練習でも絶対にプロのレベルには到達します。球数制限もそうだが、学生の本業を考え子供たちが犠牲にならない野球界を作っていってもらいたいですね」

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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