歴代1位は金田正一、現役では涌井、中田、大竹、松坂 歴代記録【与四球編】

ロッテ・涌井秀章【写真:荒川祐史】
ロッテ・涌井秀章【写真:荒川祐史】

歴代ランキングには往年の名投手が名を連ねる

 与四球は投手にとって名誉な記録ではない。制球力が悪く、よく走者を出塁させていることを示す数字だからだ。しかし投球回数がかさむと、必然的に与四球数は増えていく。与四球が多い投手は、それだけ長く主戦投手として投げたということでもある。

○NPB歴代与四球数10傑()は実働期間 BB9は9回あたりの与四球率

1 金田正一 1808与四球(1950-1969)BB9/2.94
2 米田哲也 1480与四球(1956-1977)BB9/2.60
3 中尾碩志 1436与四球(1939-1957)BB9/4.23
4 梶本隆夫 1244与四球(1954-1973)BB9/2.66
5 スタルヒン 1221与四球(1936-1955)BB9/2.63
6 別所毅彦 1206与四球(1942-1960)BB9/2.49
7 松岡弘 1163与四球(1968-1985)BB9/3.23
8 村田兆治 1144与四球(1968-1990)BB9/3.09
9 工藤公康 1128与四球(1982-2010)BB9/3.04
10 鈴木啓示 1126与四球(1966-1985)BB9/2.20

 多くの投手通算成績と同様、最多勝(400勝)の金田正一が1位、2位に勝利数2位(350勝)の米田哲也がランクされている。しかし、3位には、通算209勝の左腕、中尾がつけている。中尾は戦前から1リーグ時代に巨人のエースだった投手だが、BB9は4.23と極端に悪かった。この時代はボールが粗悪で、投手の制球力は悪く、奪三振より与四球が多い投手も珍しくない。以下、勝利数の多い投手が続いているが、その中でも制球力がそれほど良くない投手が上位に来る傾向にある。与四球数は、近年、増加の傾向にある。1969年のリーグ平均BB9はパが2.38、セが2.54だったが、2018年はパが3.25、セが3.45だ。半世紀で9回あたり1個弱、四球が増えていることになる。打高投低が進む中で、投手が打者をより警戒するようになったことと、奪三振数が増えて投手がより多くの球数を投げるようになったこと、さらに分業が進んで投手の絶対数が増えたことなどが影響していると推測される。

○現役投手の通算与四球数 10傑

1 涌井秀章(ロ)663与四球(2005-2018)BB9/2.70
2 中田賢一(ソ)613与四球(2005-2018)BB9/3.60
3 大竹寛(巨)574与四球(2003-2018)BB9/3.18
4 松坂大輔(中)536与四球(1999-2018)BB9/3.31
5 石川雅規(ヤ)532与四球(2002-2018)BB9/1.79
6 内海哲也(西)506与四球(2004-2018)BB9/2.31
7 メッセンジャー(神)488与四球(2010-2018)BB9/2.88
8 金子弌大(日)471与四球(2006-2018)BB9/2.32
9 能見篤史(神)466与四球(2005-2018)BB9/2.54
10 岸孝之(楽)456与四球(2007-2018)BB9/2.21

 1位はロッテの涌井、2位にはソフトバンクの中田が入ってくる。しかし、投球回数が減った現在では、通算与四球数で上位にランクインしそうな投手は見当たらない。現役1位の涌井でも、通算ランキングでは67位になる。1000与四球は歴代19人いるが、2008年の工藤公康(現ソフトバンク監督)を最後に現れていない。

 与四球は投球スタイルと関連性が強い数字だ。三振をたくさん奪うパワーピッチャーはその反面、与四球も増える傾向にある。一方で、打たせて取る技巧派タイプは与四球は少ない。現役ランキングで言えば、現役最多勝のヤクルト石川のBB9が1.79と非常に小さいのは、彼の投球の持ち味を如実に表しているといえるだろう。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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