ハイレベルな3投手の争い制してエースナンバー獲得 広陵148キロ右腕が目指す優勝

広陵・河野佳(けい)投手【写真:沢井史】
広陵・河野佳(けい)投手【写真:沢井史】

最速148キロ右腕 プロ注目の創志学園・西と中国大会準決勝で投げ合い注目

 第91回選抜高校野球大会(23日から12日間、甲子園)に出場する広陵(広島)は春4度目の挑戦を目指す。冷静沈着なエース・河野佳(けい)投手は昨夏の甲子園も経験した最速148キロ右腕。今大会も注目度が高い。

 「どんな場面でも落ち着いて投げられるし、コントロールもいい。今のところは投手陣の柱になるでしょう」。中井哲之監督の河野への信頼度の高さは計り知れない。昨夏の甲子園(二松学舎大付戦)で、すでに聖地のマウンドは経験済み。速いストレートは当時から目を見張るものがあったが、河野が一気に注目されるようになったのは昨秋の中国大会の準決勝。創志学園の西純矢との投げ合いだろう。剛球と鋭く曲がるスライダーで勝負する西に対し、河野自身は低めのコントロールがどれだけ出来るかがポイントだと考えた。

 試合は7回まで1-0という接戦の展開。見方が8回に6点を奪い、コールド勝ち。河野は8回無失点だった。

 実は中国大会での“ある試合”がこの好投につながっていた。中国大会初戦の鳥取商戦で最速の148キロをマーク。だが、次戦の関西戦でスピードのことが頭にちらつき、球がシュート回転してしまい8失点を喫した。力みで思うような球が投げられなかったことが一番悔やまれるが「あれだけ打ち込まれて(12安打)、力の入れ具合の大事さを感じました。いくら速い球でも、打線のいいチームだと打ち返される。しっかり低めに力強いボールを投げ込めるよう意識してきました」。

 力勝負だけでは抑えられない。スピードを意識しすぎたことを猛省し、もう一度自分のピッチングを見つめ直した。「速い球に憧れはありますけれど、そこばかり見てはダメ。ランナーが出ても、冷静にコーナーを突いて四球を出さない勝てるピッチャーが理想です」。迎えた“決戦”では、とにかく低めに球を集めることに1球1球、集中した。そのお陰で大きなコントロールミスもなく、相手打線も河野の球をなかなか捕らえ切れなかった。「いつもは、あそこまで集中すると、だんだん(集中力が)切れてくると思うのですが、あの試合に関しては全くなくて、最後まで自分のボールが投げられたと思います」と胸を張った。

 制球力にも自信を持つ。昨秋の公式戦は53回1/3を投げて四死球は12個と決して悪くはない。「四球を出すならヒットを1本打たれた方がまし」と覚悟するほど、コントロールには人一倍のこだわりを持つ。チーム内ではエース争いを繰り広げている石原勇輝、森勝哉のダブル左腕の存在が大きく、「練習ではいつも一緒だから(力を)抜けないし、あの2人がいる以上、今年も1番をずっとつけられる訳ではないです。試合では自分の後ろで投げてくれてすごく頼もしいですが、みんな負けず嫌いなので、その中で自分も絶対に負けられません」と、心強いライバルと切磋琢磨できることが、自身の成長に繋がっていると実感している。

「高校野球は8割がバッテリーだと言われているので、自分が最後までどれだけ思うように投げられるか。まずは初戦を突破して日本一を獲りたいです」。寡黙な表情ながら、強い覚悟をにじませている。

(沢井史 / Fumi Sawai)

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