巨人が「何度もお断りを」したDAZNとの提携に踏み出した背景「従来とは全く違う提案」
4年前から打診されていたが巨人はテレビ局への「恩義」から断っていた
スポーツ・チャンネル「DAZN」(ダゾーン)、読売新聞社、読売巨人軍は17日、都内のホテルで「読売新聞・読売巨人軍・DAZN包括提携発表記者会見」を都内で開き、読売新聞グループ本社・代表取締役社長の山口寿一氏、巨人・原辰徳監督、DAZNグループ日本社長の中村俊氏が出席した。DAZNは巨人のオフィシャルスポンサーになり、原辰徳監督がDAZNのアンバサダーに就任することが発表になった。
DAZNと読売巨人軍のファーストコンタクトは4年前だった。
会見で山口氏は「その後も何度かお話をいただいて参りましたが、お断りをさせていただきました」とこれまでの両者の経緯を説明。時間をかけて、話し合いを重ねてきた。
「プロ野球、読売ジャイアンツは全国の各テレビ局、テレビ放送によって育てられてきた、という思いが大変強くあります」。巨人においては、放映をし続けてきた日本テレビとの強い結び付きがある。今回もDAZNから単なる配信許諾なら、結論は同じになっていたという。そのテレビ局への「恩義」がインターネット全盛の時代でも、外部のライブ配信に躊躇していた理由だった。
一方で、ファン層の拡大も考えざるを得ない課題であることも分かっていた。今回、DAZNの中村社長からは、「従来とは全く異なる提案」を受け、話し合いが進んだ。
会見で明かした一つ目の施策は、配信権の許諾を日本テレビから得ることだった。日本テレビのCSスポーツチャンネルである「G+(ジータス)」の映像を使用し、DAZNでの映像には必ず「G+」のロゴを入れることを約束。複数のスポーツのユーザーが増えてきているデータもDAZNから提示された。サッカーなど、他のスポーツ中継から野球に興味を持ったDAZNの会員が「G+」を知るきっかけにもなる。
日本テレビとは「GIANTS LIVE STREAM」や「Hulu」といった既存のインターネット配信と共存が可能かを慎重に協議し、今回、巨人戦の配信契約をDAZNと日本テレビとの間で結ぶこととなった。山口氏は「テレビ放送に対して深く配慮されたこれまでとは内容の違うご提案をいただきました」と新しい一歩を踏み出す決断をした。
他にも親会社である読売新聞社への施策として2月から始まった新しいデジタルサービス「読売オンライン」にDAZNからプロ野球やJリーグなどのハイライト動画を提供。オンラインの読者には無料でその映像が見られる。オンラインを通じてファンの拡大につなげるのが狙いだ。
また、全国にある読売新聞販売店とDAZNは“コラボ”していく。DAZNが放送するサッカーのJ2、J3やバスケットボールのBリーグなどは各地域に根付いているため、読売新聞社の販売網でプロモーションの協力を得る。DAZNの中村社長は「今回の提携でより多くの方々にスポーツの魅力を一緒にお届けできると確信しております」と協力体制で各地のスポーツファンにアプローチをしていく。
野球ファンの拡大と、野球の魅力を届けることが両者の思いであることには変わらない。契約期間は明らかにしていないが、長期的な視野で両者は新たな時代に向けて、今後も様々な取り組みを続けていく。
(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)