鷹・王貞治球団会長が語ったイチローの“孤独感”「話しても他の人には理解できない」

イチローについて話したソフトバンク・王貞治会長【写真:福谷佑介】
イチローについて話したソフトバンク・王貞治会長【写真:福谷佑介】

4367安打を放ったイチローと868本塁打の王貞治会長

 21日に東京ドームで行われたアスレチックス戦後に現役引退を表明したマリナーズのイチロー外野手。引退を正式に表明した試合後の記者会見は実に85分間に及び、報道陣との間では、イチローらしさ溢れるユーモアあり、深みありのやり取りが展開された。

 第1回WBCで監督と選手として世界一を掴み取ったソフトバンクの王貞治球団会長は22日に報道陣に対応。「来るべきときが来ちゃったのかな。誰にもスタートがあれば、終わりもある。彼にはその日が来るのはもっと先だと思っていたけど残念だね」と惜しみつつ「大変な悩みがあった。普通の選手が感じられないレベルでの悩みだったんだと思います」とも語った。

 イチローは記者会見の最後に感じていた“孤独感”について語っている。「現在それ(孤独感)全くないです。今日の段階で、それは全くないです。それとは少し違うかもしれないですけど、アメリカに来て、メジャーリーグに来て……外国人になったこと。アメリカでは僕は外国人ですから。このことは……外国人になったことで、人の心を慮ったり、人の痛みを想像したり、今までなかった自分が現れたんですよね。この体験というのは、本を読んだり、情報を取ることはできたとしても、体験しないと自分の中からは生まれないので。孤独を感じて苦しんだことは多々ありました。ありましたけど、その体験は未来の自分にとって大きな支えになるんだろうと、今は思います。だから、辛いこと、しんどいことから逃げたいと思うのは当然のことなんですけど、でもエネルギーのある元気なときにそれに立ち向かっていく、そのことはすごく人として重要なことなのではないかなと感じています」。

 このイチローが感じていたという“孤独感”について、王会長は自身の見解を語ってくれた。日米通算4367安打のイチローと通算868本塁打の王会長。共に世界の頂点を極めた2人だけに通ずる部分もあるのだろう。王会長は“孤独感”について「話していてもほかの人には理解できない部分がある。彼の苦悩は若い人の苦悩とは違うんだ。例えば、10歳には10歳の悩みがあり、技術の世界でもレベルによって、その人なりの悩みというものがある。そういう意味で自分の悩みを理解してもらえない、期待した答えをもらえない、そういうところでの孤独があったんじゃないか」。

  常人に理解できないのみならず、選手や監督、コーチですら理解できない領域での悩み。その道を極めた者でしか分からないものがある。歴代最高となる868本の本塁打を放ってきた王会長だからこそ、の言葉だろう。

 「初めはホークス(の監督)とオリックス(の選手)と見ていたんだけど、触れてみると深さ、大きさを感じましたね」とイチローの人間性について語った王会長。イチロー自身が会見で否定した“イチロー監督“を「見てみたい」と言う一方で「彼に新たな悩みと戦わせることはさせたくない。少しは解放してあげましょうよ」とし、イチローが様々な悩みや重圧から解放されることを願っていた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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