「防ぎようのない選手」王貞治球団会長が語ったイチロー、WBCでの秘話も…

「やっぱりとにかくどんなところでも手を抜かない」

―イチロー選手は王会長とのWBCは宝物だと言っている。
「彼はやっぱりとにかくどんなところでも手を抜かない。手を抜かないというのは準備をしっかりして、WBCの時も彼は1番ストレッチだとかキャッチボールとかバッティングとか、1つ1つ全力で丁寧で。一昨日もライトから放ったけど、本当にラインが変わらないしね、スローイングの。だから、目指しているというか、意識している部分というのは、日本の野球選手もそこから学び取っていいものがたくさんあるよね。彼は彼だと、つい今時は言いがちだけど、少しでも彼に近づく、ヒット数はともかく、それくらいの気持ちで彼と同じような気持ちでやろうという形で受け入れるいいお手本だと思うんだよね」

―孤独感について
「確かに彼が話したようなことをチームメートに話したところでちょっと理解できない部分はどうしてもあると思うんだよね。彼の苦悩と若い選手たちの苦悩は違うからね。そういうのは、10歳の子には10歳の子なりの悩みがある。20歳は20歳でも。そういう言い方のほうが分かりやすいかもしれないけど、野球の技術の世界のレベルにも、2割5分しか打てない人、3割打つ人、首位打を争うような人、その人なりの悩みがある。だから彼はそう言った意味ではっきり言って、自分の悩みを話しても理解してもらえない、期待したような返事をしてもらえるという人がいなかったと思う。だから孤独で1人でやるしかないということだったんじゃないかな」

―WBCで配慮された部分は?
「彼はアメリカに家があるから、家から通わせてくれと言ったからいいよと。そのかわり我々のバスがグラウンドに着くとガンガン打っていたり、ストレッチしたり、走っていたりね。普通はあれくらいの選手なら、みんなよりもゆっくりやろうというところがあるけど、彼には全然そういうのが無くてね。そう言った意味でも、打つ打たない以外でも、一緒に参加した選手たちは大きな影響を受けたと思うね。そういうときに一緒にやった選手に聞いてみないと分からないけど、それまではホークスとオリックスというので見ていただけだったんだけどね、触れてみると深さ、大きさは感じましたね」

―監督は無理だ、と言っていましたが。
「人望がないとか言ってたね。人望とか何かは生まれるものだから。でも、彼は色々な監督の苦悩も見ているからね。今の時点ではなれないということだと思う。明日からトレーニングするって言ってたよね。まだ選手の気持ちなんだと思う」

―イチロー監督への期待は?
「見たいけど、彼にそこまで新たな悩みと戦わせることはさせたくない。少しは解放させてあげようよ」

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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