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「覚悟を持ってもらわないと困る」―早実・和泉監督がナインに浸透させる意識とは?

春季東京都高校野球大会の3回戦が神宮第二球場などで行われ、早稲田実が駿台学園を16-1、5回コールドで大勝した。早実は先制されたが4回に打者15人を送り込み、11得点のビッグイニングを作った。大量リードだったが早実の名将・和泉実監督は「最悪な展開を考えていた」と最後まで不安を持ちながらベンチで指揮を執っていた。その不安のワケを探った。

早稲田実業・和泉実監督【写真:編集部】
早稲田実業・和泉実監督【写真:編集部】

常に最悪のケースを視野に入れて采配 ベンチスタートの選手も大きな戦力

春季東京都大会3回戦 早稲田実16-1駿台学園【5回コールド】(7日・神宮)

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 春季東京都高校野球大会の3回戦が神宮第二球場などで行われ、早稲田実が駿台学園を16-1、5回コールドで大勝した。早実は先制されたが4回に打者15人を送り込み、11得点のビッグイニングを作った。大量リードだったが早実の名将・和泉実監督は「最悪な展開を考えていた」と最後まで不安を持ちながらベンチで指揮を執っていた。その不安のワケを探った。

 夏の西東京大会のシードをかけて戦う春季大会。各校、3か月後に迫った夏の大会に向けた戦いをしている。早実も公式戦登板経験の少ない菊池笙太郎(2年)が2回、宇野竜一朗(2年)が2回、最後は公式戦初登板の高橋隆之介(3年)が1回を投げた。

「5回で終わらせることができればいいけど、長いイニングになること、最悪のイメージをする中で、どう手立てを打つかを考えていた。公式戦の経験を積ませないといけないし、一方で公式戦初登板はそういうこと(最悪のケースを)見せることあるから、あの点差だから高橋だけにと任せることはできなかった」

 無事に高橋は最後の1イニングを無失点で締めた。15点の開きがあっても次の投手の準備を怠っていなかった。2番手で投げた宇野をベンチに戻さず、降板後は右翼の守備に就かせていた。ピンチになればマウンドにまた戻そうとしていた。

 信頼していないのではない。最悪のシナリオを描き、傷口を最小限で食い止めるための準備を進めていた。

「うまく行っている時は、こっちは動かない。監督は悪いことばかりを考えている。最悪な時にどう手立てを準備するかが、僕の仕事。うまく動いているときに余計なことをするのは監督の仕事ではないから」

 序盤から得点が効果的に入り、試合が有利に運べれば、これは選手の頑張り。監督はいかに劣勢を優勢に変えられるか。和泉監督の監督論が少し見えた瞬間だった。

 悪いイメージを持って挑むことは、勝利への“逆算”にも関連している。

 この春、早実の正捕手は背番号「8」の茅野真太郎(3年)が座る。もともとは捕手だったがこれまでは外野手だった。4日の2回戦・佼成学園戦で公式戦初マスク。昨秋の正捕手で背番号「2」を付ける長谷川航大(3年)が肩を負傷していたためだった。捕手出身である和泉監督はセンターライン強化のために茅野を起用。安定感のあるプレーを見せ、「茅野は動かしづらい選手」になった。

 患部が癒えた長谷川はこの日、5回に代打で出場し、そのままマスクをかぶった。茅野は中堅へと回った。長谷川の打撃にも期待している指揮官の中では、このように交代のケースは出てくる。

「誰かが打てなくて、どうにかしないといけない時、代打に出す感じになる。長谷川が今、ベンチにいても安心感がある。出しやすい。彼にとっては頭(スタメン)からいけない分、もどかしさはあるとは思うけど、昨年の経験でいいものが出てくると思う。今後、競ったりする試合展開だと、ウチには特別な選手がいるわけではないので、全員でつないでという形になると思うから」

 この試合では、前回の試合で先発だった190センチの大砲・西口純生(2年)がベンチスタートとなった。その西口も代打出て、安打を放った。

「終盤に出す子たちが、出番で最低限、繋げる部分を見せてくれている。後から出ていく子たちがやってくれるとベンチが元気になるし、私は(スタメンの)9人で戦おうなんて思っていない」

 一昨年の清宮幸太郎(日本ハム)、昨年の野村大樹(ソフトバンク)のようなプロも注目するスラッガーがいるわけではない。先発9人が圧倒的な力を持っているわけでもない。全員で一試合ずつ強くなっていかないといけない。

「後ろ(途中から)から行く子は、ゲームが難しいところで行く。簡単に行くなら9人で終わるわけだから。私が生徒たちに常々言っているのは、『スタメンを飾らないと補欠みたいな感じがあるけど、後ろから出る選手の時の方がピンチの場面。そこの覚悟を持ってもらわないと困る』と。後ろから行く選手が強力な方が、チームは強くなることと思っている。これから、適材適所見て、チーム力を上げていきたいですね」

 ベンチスタート=補欠という意識を排除するように、練習から伝えている。監督自らがこのように言葉にすることで選手たちに響く大きさも違ってくるだろう。点差が離れても、勝負が決するまでは、攻撃の手を緩めない。選手たちが役割を全うし、守備面も最後まで引き締めていた部分に勝利と同じくらい、指揮官は価値を見出していた。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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