開幕11試合で9勝2敗 好調マ軍を変貌させたディポトGMのマル秘戦略

ディポトGMは就任後、1年半の間で39度のトレードを成立させて99人の選手を動かした

 2015年シーズン終了間際の9月28日、マリナーズの第9代GMに抜擢されると即刻、組織改革に着手した。40人枠の再考と同時にスカウト、球団組織、育成部門のテコ入れを敢行。約1年半の間に、記録的な39ものトレードを成立させて99人の選手を動かした。

 今季の戦力整備を進める過程では、昨季打線の核となったロビンソン・カノ、ジーン・セグラ、そしてメジャー最多の53セーブを挙げた守護神エドウィン・ディアスまでもトレードで放出。また、在籍4年間で毎年35本以上の本塁打を記録した主砲クルーズのFA流出を阻止する構えも見せなかった。

 その背景にあるのが、混迷を招いた前任ジャック・ズレンシックGMと同じ轍は踏まないとするディポトGMの決意だった。ズレンシックGMの約7年に及ぶ在任中に行ったトレード、FA契約、延長契約のほとんどは失敗。マイナーでは若手の育成に成果を上げられない状況が続いた。ディポトGMはそんな負の連鎖を完膚なく打ち砕いていった。

 心機一転への環境がようやく整った中で迎え入れた多くの新加入の選手たちが、組織全体として掲げる理念を受け入れやすくなるのは自然な流れだった。サービス監督が「近年にない」と相好を崩したのも頷ける。指揮官は昨季終盤の失速について、理念とする意識改革が「必ずしも根付いていなかった」とも吐露している。独自の打撃理論で実績を積み上げてきたカノやクルーズらベテラン選手が中軸になっていた打線に、チームとしての統一性を浸透させることは難しかったようだ。

 4年前の就任以後、ディポトGMは着目してきた二つのデータを基に、投打におけるチーム方針を決めている。それは「優位に立てるカウントを常に意識する」ことだった。新鮮味のある響きではないが、キャンプ地のアリゾナで聞いたディポトGMの話に耳を傾けると、その理念を裏付けるデータ収集と、比較衡量、議論と意思決定への道筋がしっかりとなされたものであることを知ることができる。

「打席でもマウンドでもストライクゾーンに自制を利かせることはとても大事(『C the Z(Control the Zone』)。打者はいい球を逃さずに打つ。これがしっかりできれば必然的に打者優位のカウントに持って行ける。逆に投手は球数を少なくでき、先発であれば長い回を投げることで勝星に近づく。ただ、ストライクゾーンと言っても、打者にとって打ちやすいゾーンではなく苦手とするところを狙わなければならないというのは当然のことだ」

ディポトGMが提唱するストライクゾーンを自制する理念とは…

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