開幕から好調を支える“献身性” 大引啓次が考える勝つために求められる「姿勢」

ヤクルト・大引啓次【写真:荒川祐史】
ヤクルト・大引啓次【写真:荒川祐史】

今年で13年目 優勝するために必要なチーム力「みんなで考えて答えを出せれば一番良い」

 勝負強いバッティングと堅実な守備が売りのヤクルト大引啓次内野手が今季、プロ13年目を迎えた。昨季は自己最少の47試合の出場。今年も若手の台頭もあり、ここまでスタメン出場はない。しかし、そんなことは関係ない。チームが1つになって勝つというやりがいを求め、男は戦っている。

「もうちょっとだと思うけど、そこの差が大きい。具体的にではなく、本当に細かいことの積み重ねなんですよ」

 18年、終盤戦の勢いのまま進んだCSシリーズでは、本拠地神宮球場で巨人に敗れ去った。しかも、菅野智之にノーヒットノーランまで達成される屈辱だった。

「短期決戦の怖さというのもある。でも今、考えてみてもあれが菅野なんですよね。本当に大切な場面で自分のマックスを発揮できる。それは普段からの積み重ねもあるんじゃないでしょうかね」

 大引はアマチュア時代から、キャプテンシーに定評があった。法政大学時代には「学生野球の鏡」とまで称賛される人格者。己を消してまでチームに貢献する姿勢は今も変わらない。実家が神社をやっているというのも、どことなく納得する気がするが。

「まあ、よく言われましたけど、実家は関係ないですよ。それより野球でもなんでもそうだと思いますけど、勝たないとつまらない。特にチーム競技は1つになって勝った時は本当に嬉しい。やりがいがありますよね」

 オリックス時代はあまり勝てない時代が続いた。13年に移籍した日本ハムは独自の野球システムを構築し、新風を巻き起こし始めていた時期だったが上位進出は果たせなかった。

「勝てなかった時の悔しさは憶えています。自分自身の怪我や故障もありましたから、不甲斐ない気持ちでした。日本ハムでも僕が移籍して勝てなかった。自分が何をすべきかを改めて考える時期ではありました」

 15年に移籍したヤクルトではいきなりのリーグ制覇。しかしその後はBクラスに転落し、ここへきて再びチームは浮上の兆しを見せている。

「チームが勝つためには、色々な要素が必要。もちろん勢いや雰囲気もある。でも、それだけでは勝ち続けることはできない。そこを考える時期でした。色々なチームと戦ってきましたけど、やはり強いチームは目先の1つ1つをしっかりやっている。本当に細かい部分で、その日の勝敗には関係なくともそれが生きてくるんだということを思い知らされました」

「例えば、捕手が投球を少しこぼすだけで、次の塁を伺う。よく言われる内野ゴロでも一塁へ力を抜かず走ることもそう。これはキレイごとではなく、普段当たり前にやれていれば、大舞台でもできる。例えば、ソフトバンクや広島といったチームはできていると思う」

 当たり前のことをやる、ということは逆に難しい。できていない場合は、それをしっかり認識して意識付けを高くしないといけない。そのためには自ら憎まれ役となって、口に出すこともあるという。

 「チーム内で意見することもあります。でも頭ごなしに言うとか、怒ったりはしない。みんなで考えて答えを出せれば一番良い。考えて出した答えや行動は、忘れにくいと思う。この場面、俺はこう思うけど、どう思った、とか」

「野球観というのは人それぞれだと思います。やはりプロに入るくらいの選手ですから、各々の野球観を持っている。それを否定はしたくない。自分の野球観、そして他の選手の野球観を照らし合わせるというのかな。その方向性が近くなって同じ方向へ向けば、チームは必ず良くなると思う」

試合には「常時出たい」でも…チームの中には役割がある

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