異例の外野手→投手転向が人生の転機に オリ張奕、育成から1軍への逆転人生

オリックスの張奕【画像:(C)PLM】
オリックスの張奕【画像:(C)PLM】

5月1日に支配下登録、16日のロッテ戦では1軍デビューを果たす

「令和最初の日」となった、2019年5月1日。この日、台湾出身のひとりの若者が人生の新たな一歩を踏み出した。同日、オリックスは育成選手だった張奕(ちょう・やく)投手を支配下選手登録することを発表。レアケースともいえる野手から投手へのコンバートを成功させた25歳の右腕は、パ・リーグで存在感を示しつつある台湾出身選手たちに続く新星となれるか。

 チャイニーズ・タイペイ代表の中心選手として活躍する陽岱鋼(巨人)のいとこでもある張奕投手は、その陽岱鋼選手と同じ福岡第一高校に入学し、投打にわたって活躍を見せる。その後、日本経済大学を経て、2016年の育成ドラフト1巡目でオリックスから指名を受けてNPB入りを果たす。

 張奕投手がプロとしてのキャリアをスタートさせたポジションは、陽岱鋼と同じ外野手だった。だが、1年目の2017年は2軍で59試合に出場して打率.091。続く2018年も2軍の15試合でノーヒットと、プロの壁に直面して打撃面で力を発揮できず。支配下登録に向けて、いばらの道が続いていた。

 そんな中で行われた大胆なコンバートが、張奕投手にとって大きな転機となった。高校時代は投手としても活躍していたこともあり、2018年6月に外野手から投手へ転向。投手から野手というコンバートの例は多いが、逆のパターンで一軍戦力となったのは萩原淳氏(元オリックス、日本ハム・ヤクルト)や嘉勢敏弘氏(元オリックス)といったごく一握りの例しかないという、かなり珍しいケースだ。

 しかし、張奕投手は2018年に2軍で5試合に登板してわずか1失点、防御率1.80という快投を披露。投手としての非凡な才能を示すと、翌2019年も6試合で1勝1敗、防御率2.03と結果を残した。そして、その活躍が認められ、5月1日に支配下選手登録を勝ち取った。「令和になってすぐのタイミングだったので、とても驚きました」とコメントした張奕投手は「言われた瞬間は泣きそうになりましたが、今はホッとした気持ちです」と、喜びと安堵の気持ちを語っている。

 晴れて2桁の背番号を手にした張奕投手は、今季のパ・リーグにおける8人目の台湾出身の支配下登録選手となった。現在のパ・リーグ各球団に所属する、現役選手の内訳は以下の通りだ。

・日本ハム:王柏融外野手
・楽天:宋家豪投手
・西武:廖任磊投手、郭俊麟投手、呉念庭選手
・ロッテ:チェン・グァンユウ投手、李杜軒選手
・オリックス:張奕投手

 ソフトバンクを除く5球団にそれぞれ1名以上の台湾出身選手が在籍している。リーグ最多の3選手が所属する西武では、14年間にわたって日本球界でプレーを続けた許銘傑氏も昨季から二軍投手コーチとして在籍。他の球団でも王柏融、宋家豪、チェンはそれぞれ一軍の貴重な戦力として存在感を発揮しており、今や「台湾出身選手」がひとつの勢力となりつつある。

 そんな流れの中で、晴れて支配下登録を勝ち取ってオリックス唯一の台湾出身選手となった張奕。日本の高校と大学を経て、ドラフト指名を受けてのプロ入りであるため、外国人枠の影響を受けないのも追い風だ。16日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦では8回途中から登板し1軍デビューも果たした。

 張奕は支配下登録を結んだ際のコメントで「球団の方からは『野手から投手に転向してよくがんばってくれた』と言っていただきました」と語っていた。大きな試練を乗り越えて第一目標を達成した若武者には、台湾の先達たち、そして偉大な親戚・陽岱鋼に追いつき、そして追い越すような活躍を期待したいところだ。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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