なぜ、ホークスは米ドラ1投手の獲得に動いたか? 根底にある球団の目指す姿
6年総額で約7億7000万円で契約へ、なぜスチュワートはホークスに?
ソフトバンクが前代未聞の補強策に打って出た。昨年の全米ドラフト1巡目(全体8位)でブレーブスに指名されたカーター・スチュワート投手を獲得するという。米国での報道が一斉に日米へと広まっていた、スチュワートのホークス入団。まだ正式な発表はされていないが、米メディアの報じたところによると、契約は6年総額で700万ドル(約7億7000万円)以上になるようで、正式な発表を待つ段階にあるようだ。
昨年のドラフト指名後、手首の懸念もあって、ブレーブスとは契約に至らなかったスチュワート。イースタンフロリダ州立短大に進学し、今年のドラフトでも上位指名の有力な候補に挙げられていたが、米球界ではなく、日本のプロ野球を進路に選択するという異例の決断を下した。全米ドラフト1巡目候補の日本球界入りも驚きだが、そういった若手選手に触手を伸ばして獲得に漕ぎ着けたソフトバンクの動きも驚くべきポイントだろう。
ソフトバンクのこの補強策は、今までの日本球界にはない発想だ。日本のプロ野球界での補強策といえば、メジャーリーグ傘下3Aでプレーしている選手が主流。これに、近年ではメキシカンリーグやベネズエラ、プエルトリコ、ドミニカ共和国、キューバなどでプレーしているプロ選手を獲得するケースが増えてきている。メジャーのドラフト候補の若手有望株を、米球界に入る前に獲得してしまおうなどという考えは、日本の球団は持ち合わせていなかっただろう。
広島のドミニカ共和国のカープアカデミーのような、外国人選手を“育てる”という発想も少数派で、外国人枠の問題もあることから「外国人=即戦力」が普通の考えだ。その中でも、ソフトバンクは最近、やや異なる動きを見せていた。メキシカンリーグで1年だけのプロキャリアしかなかったスアレスをメジャー球団との争奪戦を制して獲得したり、キューバ人のモイネロやコラスを育成選手として獲得し、自前で育成。外国人も“育てる時代”として、即戦力補強と並行して行ってきた。
なぜ、ソフトバンクは、前代未聞の米ドラ1獲得を目指したのか。そこには、ソフトバンクの考え、そして球団が将来目指している姿が関わっているように見える。