選手の契約をアシストした「アジアンブリーズ」 指導者が伝えるコーチの本質とは
海外のコーチが考える役割
アジアンブリーズは世界中から選手が集まり、多国籍軍となった。コーチ陣は日々の練習やミーティングを通じて選手とのコミュニケーションの機会を大切にした。その中でコーチが選手に強く説いていたことは何なのか。色川氏にこの質問をすると当時のことを思い出すためにしばらく考えた。その後「印象的だった」と前置きし、外野手の指導を行っていたエディ・ジェラルド氏の言葉を次のように説明した。
「これはエディが言っていたことですが、日本人選手は自分の打席や出番が終わるとコーチに『どこの部分が悪かったか』と聞いてくる選手が多いそうです。彼が選手に伝えていたのは自身の強みに気づくことが大切で、その部分をもっと磨いていけばより良い選手になれるということでした」
日本の指導者は選手のミスを許さない、勝つための野球という一方通行の指導スタイルをとる傾向がある。その一方で、海外の指導者は選手の可能性を見出して強みを伸ばし、逆に弱みに対しては共に改善に取り組むスタイルをとる。指導にあたったカスティーヨ氏は「選手たちが毎日のように野球を楽しいと言ってくれる。しかし、なぜ日本の選手は不安そうな顔でプレイするのだろう」と驚きを隠せなかったそうだ。
アジアンブリーズのコーチ陣は、個人練習で選手の苦手な部分の修正にとりかかっていた。前述のジェラルド氏は「選手を個々の目標に導くことがコーチの仕事です」と話していたという。選手との関わり方によって、選手の将来が決まる。それだけ指導者の役割は重要となる。
(豊川遼 / Ryo Toyokawa)