中日高橋よりも広島鈴木、投手は大瀬良…セイバー目線で選ぶ5月月間MVP【セ編】

投手は広島の大瀬良&ジョンソン、DeNA今永が有力候補か

○5月月間MVP セ・リーグ投手部門

大瀬良大地(広島)
登板5 3勝0敗
WHIP0.76 QS率100% 与四球1 FIP1.91 RSAA9.00(すべてリーグ1位)
防御率2.13 奪三振率 7.34 被打率0.200

 候補選手は7名。その中でも有力なのはの3選手です。

○大瀬良大地
登板5 3勝0敗 防御率2.13 奪三振31 奪三振率7.34 被打率.200

○今永昇太
登板5 4勝1敗 防御率1.78 奪三振36 奪三振率9.17 被打率.195

○クリス・ジョンソン
登板4 3勝0敗 防御率1.44 奪三振22 奪三振率7.92 被打率.217

 4月の不調を振り払い、5月に月間20勝で一躍首位に躍り出た広島カープの投の立役者、大瀬良とジョンソン、そして月間4勝の今永の三つ巴になりそうです。誰もが公式の月間MVPを獲ってもおかしくない成績なのですが、私は大瀬良が獲得するものと予想します。その理由は後述します。

 ではセイバーメトリクスの視点での評価を見てみましょう。

大瀬良大地
FIP1.91 WHIP0.76 QS率100% HQS率60% K/BB31.00 RSAA9.00

今永昇太
FIP3.26 WHIP1.16 QS率100% HQS率60% K/BB2.12 RSAA3.06

クリス・ジョンソン
FIP3.48 WHIP1.16 QS率75% HQS率0% K/BB2.44 RSAA1.56

 被本塁打、与四死球、奪三振のみで投手を評価するFIP、1イニングあたり許したランナーの平均数を示すWHIP、6回以上登板で自責点3以内に抑えた割合を示すQS率、7回以上登板で自責点2以内に抑えた割合を示すHQS率、与四球に対する奪三振の割合を示すK/BB、そして平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標である

RSAA=(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9

など各部門において、大瀬良の指標はリーグ1位を示しています。特筆すべきは大瀬良の与四球数です。対戦打者数143に対し与えた四球はわずかに1。これに対し今永の与四球は15。これは大きな差になりました。ちなみに大瀬良から5月に唯一四球を選んだのは2日阪神戦での糸原健斗です。与四球が少ないということは当然投球数にも影響します。

 3投手の投球数は

大瀬良 投球回数38回 投球数512 P/IP13.47
今永 投球回数35回1/3 投球数591 P/IP16.73
ジョンソン 投球回数25回 投球数435 P/IP17.40

 P/IPは1イニングあたりの投球数平均を示しますが、大瀬良は1イニング13球程度で終えていることがわかります。

 大瀬良は5試合のうち2試合で完投、しかも無四球での完投という快投を演じました。5月18日の中日戦では113球の完投、22日の中日戦ではわずか91球で完投しています。選考委員の中に「先発は完投して当然」とお考えになる方もいらっしゃることでしょう。この無四球完投2つが大きく評価されるのではないかということで、5月の公式のセ・リーグ月間MVPに大瀬良大地が選ばれると予想し、セイバーメトリクスによる評価でも5月のMVPに推挙いたします。

鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。

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