日本ハムも参加する「インクルージョンボール」とは? 古くなったボールを再活用

「インクルージョンボール」発表会見に臨んだNPO法人北海道野球協議会・柳理事長(右)とNPO法人札幌障害者活動支援センター ライフの前野充さん【写真:石川加奈子】
「インクルージョンボール」発表会見に臨んだNPO法人北海道野球協議会・柳理事長(右)とNPO法人札幌障害者活動支援センター ライフの前野充さん【写真:石川加奈子】

使用できなくなったボールを障がい者就労支援施設で補修し再利用

 NPO法人北海道野球協議会が古くなった硬式野球ボールをリサイクルする「インクルージョンボール」事業をスタートさせた。

 糸がほつれて使用できないまま学校やチームに保管されているボールを回収し、障がい者就労支援施設で補修した上で、そのボールを循環させて再利用する仕組みを北海道に構築。インクルージョンとは包括という意味で、ソーシャル・インクルージョン(すべての人々を孤独や孤立、排除や摩擦から援護し、健康で文化的な生活の実現につなげるよう、社会の構成員として包み支え合う)から名付けた。

 同様の試みは関西で行われている「エコボール」などがあるが、今回の事業の特徴はプロアマ連携にある。プロ、アマ18団体が加盟するNPO法人北海道野球協議会が主催することにより、同協議会に加盟する日本ハムと高校、大学などアマチュア野球が協同して取り組む新しい形が出来上がった。

 手始めに道内の高校44校が2200個のボールを提供した。8月中に29の事業所で手分けしてボールを補修し、今秋にはリサイクルボールを希望するチームに譲る。工賃は1球あたり、同協議会が30円、リサイクルボールを希望するチームが30円をそれぞれ負担する。

 障がい者の就労支援とボールのリサイクルを両立する社会貢献・スポーツ振興事業としても注目される。7月5日に札幌市内で行われた発表会見に出席した同協議会の柳俊之理事長は「私が高校生の頃には破れたボールを毎日2、3個ずつ持ち帰って、家で縫った覚えがあります。野球用具は高いと言われますが、この仕組みにより、たくさんのボールで野球を楽しんでもらえたらと思います」と話した。障がい者にもメリットがある。事業所の窓口にあたるNPO法人札幌障害者活動支援センター ライフの前野充さんは「好きな時間に好きなだけできる安定した仕事というのは大変ありがたいです」と歓迎した。

 民間企業も協力を名乗り出た。幸楽輸送株式会社と株式会社シンクランがボールの輸送を担い、美津濃株式会社がボールを補修するための糸や針などの必要資材を提供する。

 同協議会は高校だけではなく、大学や社会人の連盟にも古くなったボールの提供を呼びかけている。年間1万個のリサイクルを想定し、春に集めて、秋に戻す循環を長く続けていきたい考えだ。

※NPO法人北海道野球協議会 2000年に発足。日本野球連盟北海道地区連盟、北海道学生野球連盟、札幌学生野球連盟、北海道高等学校野球連盟、北海道軟式野球連盟、日本リトルシニア中学硬式野球協会北海道連盟、ボーイズリーグ日本少年野球連盟北海道支部、北海道少年軟式野球連盟、北海道日本ハムファイターズなど少年から還暦、女子、プロまで道内の野球、ソフトボール18団体が加盟し、普及発展のための活動を行なっている。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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