「小さいからってなめんなよ!」智弁学園の“小さな巨人”が誓うVと監督への想い

163センチながらパンチ力のある智弁学園・坂下翔馬【写真:編集部】
163センチながらパンチ力のある智弁学園・坂下翔馬【写真:編集部】

奈良・智弁学園の坂下は1年夏から出場 163センチと小柄で好きな選手はアルトゥーベ

 2年前の夏、軽快な身のこなしでセカンドを守る1年生の姿が目にとまった。小柄なはずなのだが、プレーをしているとどうも小ささを感じさせない。むしろ大きくも見える。智弁学園の主将・坂下翔馬(3年)は163センチの体がずっとコンプレックスだった。少しでも身長を伸ばそうと、良いと聞いたことはとことんやってみた。でも、伸びなかった。3年間彼を取材してきて、ずっと口にしてきた言葉がある。

「おっきい奴に負けたくない」

 最初の頃は、身長の高い選手への嫉妬心のようなものが含まれていたが、智弁学園・小坂将商監督と出会い、次第にそれがパワーへと変わっていった。今ではこの体が自分の最大の特徴だと言い切る。指揮官との二人三脚もゴールを迎えようとしている。

 主将として最後の夏を迎えた坂下だが、すんなりとチームをまとめる立場になれたわけではなかった。昨夏の新チームの始動日。坂下は「キャプテンをやりたいです」と申し出たが、小坂監督の答えは「NO」だった。お前たちで決めてこいと指揮官は選手たちにキャプテンを選ばせた結果、みんなが選んだのは結局、坂下だった。

 小坂監督はアメとムチをうまく使い分ける。おそらく選手たちが坂下を指名することを分かっていて、あえて自分から「YES」を出さなかったと思う。坂下の性格をよく把握した上で、智弁学園の主将は簡単ではないということを伝えたかったのだろう。念願のキャプテンとしてスタートを切ったが、末っ子気質の坂下はうまくチームを引っ張ることができなかった。

「感情が顔に出やすくて、自分のことしか考えられていなかった」。秋の大会は準々決勝でライバル・天理にコールド負け。ここで小坂監督の“鞭”が発動する。

「こんなキャプテンやから負けるんや」

 ウエートルームで、1人で泣いた。悔しくて悔しくてたまらなかった。しんどい、辞めたいといった言葉が頭をよぎった。そんな坂下に手を差し伸べたのも、もちろん小坂監督だ。

いつも心に寄り添ってくれていた小坂監督 絶対に「恩返しを…」と誓う夏

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