打者は中日ビシエド、投手はDeNA今永 セイバー目線で選出、8月の月間MVP【セ編】
規定投球回未満も、今永がブキャナンを上回る
8月月間MVP セ・リーグ投手部門
○今永昇太(DeNA)4試合 3勝0敗 FIP1.80 RSAA5.92 K/BB3.38 防御率1.44 WHIP1.12 奪三振率9.72 QS率50%
公式の月間MVPの有力候補は以下の2人と考えられます。
デビッド・ブキャナン(ヤクルト)5試合 3勝0敗 防御率1.64 奪三振22 奪三振率6.0 被打率.244
菅野智之(巨人)5試合 3勝1敗 防御率2.31 奪三振32 奪三振率8.23 被打率.219
規定投球回に達している投手の中で、ただ1人の防御率1点台、さらには最多勝、勝率100%であることが評価され、ブキャナンが公式の月間MVP最有力候補と考えられます。
ですが、今永の成績は以下の通りで、上記の2人と比較しても遜色ありません。
今永昇太 4試合 3勝0敗 防御率1.44 奪三振27 奪三振率9.72 被打率.220
今永は最多勝、勝率100%で、防御率、奪三振率ではブキャナンを上回っています。ただ、月間の規定投球回数(27回)に達していないため(25回自責4)、やはりブキャナンに分がありそうです。
では、セイバーメトリクスの観点で3投手を評価してみましょう。
今永昇太 FIP1.80 WHIP1.12 QS率50% HQS率25% K/BB3.38 RSAA5.92 被本塁打0
デビッド・ブキャナン FIP2.91 WHIP1.09 QS率100% HQS率40% K/BB3.67 RSAA3.76 被本塁打1
菅野智之 FIP2.92 WHIP0.97 QS率80% HQS率80% K/BB5.33 RSAA3.94 被本塁打3
菅野は7月2日の中日戦で完封して以降、1か月間勝ち星から見放されていました。ですが、7回以上登板で自責点2以内に抑えるハイクオリティスタート(HQS)を8月8日の中日戦から4試合連続で達成しています。ただ、被本塁打の多さが気になります。
今永は規定投球回数に達していませんが、(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9という計算式によって、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAにおいてリーグ1位になります。RSAAは投球回数に依存しており、投球回数が少なければ不利になるのですが、今永のRSAAは他の選手を上回りました。よって今永昇太を8月の月間MVPに推挙いたします。
今永は9月1日時点で勝利数13、防御率2.38、奪三振163、完封3がすべてリーグ1位。勝率も1位となれば「投手5冠」を達成することになります。そうなれば2006年の斉藤和巳(ソフトバンク)以来ですが、左腕では初の快挙になるとのことです。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。