世界ランク1位もマナーが悪い? 審判員が侍J戦士に送りたいスポーツマンシップ

パ・リーグで約30年審判員を務めた山崎夏生氏【写真:編集部】
パ・リーグで約30年審判員を務めた山崎夏生氏【写真:編集部】

キャッチング次第で審判の侮辱につながる 試合後の抗議もマナー違反

 キャッチングとはしっかりと見せることだと思います。ヤクルトの古田敦也氏や横浜、中日で活躍した谷繁元信氏といった長くレギュラーだった捕手は上手でした。キャッチングが本当に丁寧でした。下手な捕手はミットを大きくずらす。ずらすことを教えるコーチもいるとも聞きます。

 また、国際大会の試合後に、審判室へ文句を言いに行くという場面も見られますが、ゲームが終われば、ノーサイドです。ただの質問かもしれないですが、終わったことに対する質問はクレームと一緒です。そこで回答を得られて、ミスを認めさせて何になるのでしょうか。ゲームは戻りません。潔くない。国際大会で審判をする人たちはライセンスがあり、トップレベルです。代表として選ばれている人が、精いっぱいのジャッジをしています。ミスに映ることもあるかもしれませんが、文句を言うのは、彼らに対する敬意がありません。

 審判への敬意を持て、と、一方的に言っているのではありません。ジャッジする側も反省は必要ですし、技術向上のための努力を怠ってはいけません。審判よ、しっかりしろーという思いで見ているファンも多いと思いますから。

 ミスジャッジと思われるような場面があれば、試合後は審判団もミーティングをしています。下されたジャッジに疑問が生まれたら、試合中であるならば、他の3人の審判が協議する必要があります。1番いいのは、そういう方法を取って、その場で正しいジャッジに訂正するということだと思います。ゲームの責任は全審判員にあります。審判を「クルー」と呼ぶのは、船の乗組員を意味するからです。全員で安全な“航海”をしましょうという意味です。

 安全な航海はもちろんですが、審判の誤審や好ジャッジも球史を彩ってきました。何が起きるかはわからない。歴史の証人になるのも、野球を楽しむひとつだとも、思っています。

(山崎夏生 / Natsuo Yamazaki)
1955年7月2日、新潟県上越市生まれ。64歳。新潟・高田高、北海道大学で主に投手として硬式野球部でプレー。1979年に新聞社に入社も野球現場への夢を諦められずプロ野球審判員を目指す。1982年にパ・リーグ審判員に採用され、2010年まで審判員として活躍。その後はNPBの審判技術指導員として後進の育成。2018年に退職。現在はフリーで活動し、講演やアマチュアの審判員として現役復帰し、野球の魅力を伝えている。

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