ロッテ福浦の“金言”が生んだ絶対的キャプテン・鈴木大地「自分が情けなかった」
福浦が口にしたキャプテンとしての役割、鈴木はどう変わったのか
問いかけた疑問に若きキャプテンがなにかを感じたと察した福浦は言葉を続けた。今度は映像を見るのを止め、鈴木に鋭い眼光を向け、強く願うように話し出した。
「オレは試合に出たり出なかったり。オマエは今、全試合に出ている。だからオマエが先陣を切ってやって欲しい。グラウンドでは年齢も関係ないし、遠慮する必要もない。そうすることで何かが変わる可能性はある。ならば、した方がいい。悔いのないようにできることは全てしたほうがいい。だいぶ昔のことだけど、オレも先輩にそう教わった」
それからの鈴木は動いた。翌日には練習前にグラウンドで選手だけのミーティングを開催した。福浦らベテラン選手たちにも意見を聞いた。若きキャプテンである自分が鼓舞するだけではなく、ベテランの含蓄のある発言によって、選手たちの心を動かそうと考えた。勝ちに対する思いをもう一度、共有した。そして、守備ではことあるごとに投手に声をかけるようになった。連打を食らい、気持ちの整理がつかない状態になっていると思った時はひと呼吸を置くためにマウンドに歩み寄った。時には声をかけ、時にはポンとお尻を叩くだけの時もある。叱咤したり、激励したり。ただ見守るのではなく、動くことで事態をなんとか好転させようと努力し続けた。
月日は流れ、今、鈴木にキャプテンという肩書きはない。もう肩書きはいらないのだ。グラウンドで誰もが認めるキャプテンシーを発揮している。後輩が多くなったチームにおいてマウンドの投手を叱咤激励し続ける姿は不変だ。チーム状態が悪い時は率先して選手たちに呼びかけて、ミーティングを開きチームをまとめ上げている。その原点には大ベテラン、福浦の存在は欠かせない。
「最高の形で福浦さんを送り出したいです」。鈴木は事あるごとにそう口にした。背番号「9」の背中から様々なことを学んだ8年間だった。時には直接聞き、教えてもらった。マリーンズ愛の詰まった言葉の数々。今度は鈴木が後輩たちへと受け継いでいくことになる。
(マリーンズ球団広報 梶原紀章)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)