ロッテ一筋26年の現役生活を終える福浦和也 天才打者の数々の名場面を振り返る(前編)

ポストシーズンでも勝負強さを発揮し、殊勲打を連発

○3戦連続2桁得点を決める日本シリーズでの満塁弾(2005年10月25日)

 ロッテは2005年に84勝49敗3分け、勝率.632でレギュラーシーズン2位となり、プレーオフで同1位のソフトバンクを破って31年ぶりのリーグ制覇を達成した。福浦は5年連続で打率3割をマークし、「3番・一塁」としてチームに貢献。プレーオフ第5戦で里崎智也捕手の二塁打で一塁から激走して決勝のホームに滑り込んだ姿は多くのファンの記憶に強く残るものだった。

 阪神との日本シリーズでもチームの勢いはとどまるところを知らず、本拠地で行われた最初の2試合で打線が爆発。10対1、10対0と2戦続けて大勝すると、甲子園で行われた第3戦でも「マリンガン打線」は好調を持続。この年のセ・リーグ最多勝の下柳剛投手から3点を奪い、6回終了時点で3対1と試合を優位に進めていた。

 そして迎えた7回、ロッテは藤川球児投手と桟原将司投手を捉えて3点を奪い、なおも無死満塁という場面で福浦が打席に。頼れる3番打者はこの場面で初球を完璧に捉え、甲子園のライトスタンドへグランドスラムを叩き込んだ。この一打でこの回7点とし、チームは3試合連続10得点の快挙を達成。完全に勢いづいたロッテは第4戦も制して、4連勝で31年ぶりの日本一に輝いた。

○クライマックスシリーズ初戦で決勝本塁打(2010年10月9日)

 山あり谷ありだった2010年は、最終戦に勝利して4位日本ハムに0.5ゲーム差で3位に滑り込んだ。2位西武とのクライマックスシリーズ第1戦はロッテ成瀬善久、西武涌井秀章両投手の好投により、拮抗した展開となった。1-1で迎えた8回裏に西武が一挙4点を挙げて試合を決めたかと思われたが、ロッテも9回表に前年まで在籍していた西武の守護神・シコースキー投手を攻めて4点を奪って同点に。試合は延長戦に突入した。

 レギュラーシーズン3位のロッテはこの試合に引き分けると、残り2試合のどちらかで1敗すれば敗退が決まる。いわば、引き分けはほぼ負けに等しいという状況だった。そんな中で迎えた11回表、先頭で福浦が打席に入った。福浦はこの年、打率.295、13本塁打と、過去3年間続いた不振から脱却していたが、対右投手の打率.318に対して対左投手は.182と、かつては苦にしなかった左腕を極端に苦手としていた。その相性もあってか、西武渡辺久信監督はワンポイントとして左腕の土肥をマウンドに送り込んだ。

 しかし、5年前の日本一を知るベテランは苦手なはずのサウスポーのボールを完璧なスイングでを捉え、試合を決める一打をロッテファンの待つ右翼席に届けた。1対5からの大逆転勝利で勢いづいたチームは、続く第2戦も1点ビハインドの9回表に里崎の同点本塁打で追いつき、2日連続の逆転勝利でステージ突破。続くファイナルステージと日本シリーズも勝ち抜き、「史上最大の下克上」と呼ばれる奇跡の日本一を成し遂げてらいる。

(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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