日ハム實松、現役引退で8度宙に舞う “涙”の両軍胴上げ「感謝。今までありがとう」

巨人・村田修一コーチから花束を受け取る日本ハム・實松一成【画像:パーソル パ・リーグTV】
巨人・村田修一コーチから花束を受け取る日本ハム・實松一成【画像:パーソル パ・リーグTV】

「まさか胴上げしてもらえると思ってなかったですし、巨人の選手が来てくれるとも思ってなかった」

 今季限りで現役引退する日本ハム・實松一成ファーム育成コーチ兼捕手は23日、“引退試合”となるイースタン・巨人戦(鎌ケ谷)に「1番・捕手」で先発出場。初回の守備では3者凡退に抑えるリードを見せた。初回の第1打席は二失で代走・郡を送られ、21年間の現役生活に幕を下ろした。チームは2-0で完封勝ちし、イースタン本拠地最終戦を飾った。

 感激の両軍胴上げだった。試合後、ホームベース付近に日本ハムの首脳陣、選手だけでなく、06年から11年間所属した巨人の首脳陣、選手も集結。盟友の巨人・村田修一ファーム打撃コーチらの手で8度宙に待った。

「まさか胴上げしてもらえると思ってなかったですし、ジャイアンツの選手が来てくれるとも思ってなかったですから。本当に嬉しい気持ちと感謝と。『今までありがとう、みんな』という思いしかなく、言葉にも出なかったですね」

 涙が止まらなかった。プレーボールと同時に両目を真っ赤にした。現役最終戦の見せ場は初回2死の守備。山下航の弱いゴロが自身の前へ。マスクを脱いで猛チャージをかけると、一塁へ強肩スロー。捕ゴロとして3者凡退に抑えた。チームメートから自軍ベンチ前で花道を作って出迎えられた。

「涙は出ないと思ったんですけど、守備に就いているときから。プレーボールと同時に涙が出てきちゃって『なんなんだろうな』と思って……。自分でも抑えられない感情というか、初めての経験で。でも、この場を作ってくれたファームの関係者、最後までやってくれた巨人軍の関係者に感謝しています」

「自分のプレーが捕ゴロで終わるのはなかなか狙って出来るものではないので。自分のところに飛んできてくれたので、これも『お疲れ様』という意味なのかなと思いました」

 初回先頭の第1打席ではヤングマンから中堅方向へ打ち返した。二塁・湯浅がはじいて二失となったが、最終打席で出塁した。「当てさせてもらったかな。気を使わせてもらったのかなと思いますけど、最後までプレーできてよかったです」。直後に代走・郡が送られて途中交代。自軍やスタンドからだけでなく、古巣の巨人ベンチからも拍手を送られ、各方面に深く頭を下げた。

 17日に今季限りでの現役引退を発表。これまでに球団側から1軍での引退試合を打診されたが、「1軍での引退試合を打診していただいた球団には感謝の気持ちしかありません。鎌ケ谷でプロ野球選手としてスタートしたので、最後は鎌ケ谷で終えたい気持ちが強かった」と、イースタン本拠地最終戦となるこの日を現役最終戦に選んだ。球場正面には日本ハムの金子弌大投手、鶴岡慎也1軍バッテリーコーチ兼捕手、矢野謙次チーム統括本部特命コーチだけでなく、楽天の平石洋介監督、巨人の村田修一ファーム打撃兼内野守備コーチ、鍵谷陽平投手、野球評論家の森本稀哲氏からの大きな花が飾られた。

「プロ野球はここ(鎌ケ谷)で始まって、ここで終えた。自分でもここで終えたいと思ってましたし。いろんなことがありましたけど、全ていい思い出にして刻んでおきたいと思います。完全燃焼ですね。これが僕の限界でした」

「今日の朝、練習が終わって試合前ぐらいは全く実感がなくて……。『引退するってなんなんだ。明日から野球をやらないのはどういう感じなんだ』と実感がなくて。今こうしてこんなことをやってもらったりすると、『終わったんだな』というふうな実感が少しずつ出てきてます」

「松坂世代」の捕手として21年間、球界を引っ張ってきた38歳。プロ生活をスタートさせた鎌ケ谷の地で静かにユニホームを脱いだ。

■實松一成(さねまつ・かずなり)1981年1月18日、佐賀県出身。佐賀学園3年夏に甲子園出場。高校全日本では松坂大輔(現中日)とバッテリーを組んだ。98年ドラフト1位で日本ハム入り。01年から出場機会を増やし、4年目の02年には開幕スタメンマスク、自己最多82試合に出場した。06年に岡島秀樹との交換トレードで古城茂幸と共に巨人へ移籍。阿部慎之助の2番手捕手として12年からのリーグ3連覇に大きく貢献した。17年オフに巨人から戦力外となると、翌18年から北海道日本ハムに復帰。ファーム育成コーチ兼捕手として若手の育成にも尽力した。プロ通算516試合出場し、打率.166、137安打、20本塁打、58打点。177センチ、89キロ。右投右打。

【動画】日本ハムだけじゃなく古巣・巨人のメンバーも集まって… 現役引退の日ハム實松を両軍胴上げする映像

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