元オリ監督が評価する19年ドラフト逸材たち 「成長曲線がはっきりイメージできる」
一芸に長けた選手にも熱視線「ファンの方々も見ていてワクワクする一人ではないだろうか」
野球の中で重要なポジションは第2の監督とも言われる捕手だ。東海大の海野隆司も球団によっては上位で指名する選手だろう。私が捕手を見る基準として、まず肩はある程度のレベルは欲しい。盗塁など相手の進塁は投手との共同作業だが肩は必須条件だ。リード、ブロッキングなどはキャリアを平行して習得できるが肩と体の強さは中々、育てることは難しい。その点で海野は打撃も含め期待値の高い捕手といえるだろう。
個人的な楽しみとしては一芸をもった選手にも注目している。総合的な能力は高くなくても飛びぬけた“個性”はチームの中で必要なピースの一つになる。足りないものは後から身につけて行けばとんでもない選手になる可能性を持っているからです。今年ならホークスの周東のような足で侍ジャパンに選出されるような一芸はファンの方々も見ていてワクワクする一人ではないだろうか。
俊足選手ではないがパナソニックの片山勢三はいわゆる“ぽっちゃり型”のスラッガータイプとして魅力を感じる。プロの世界でも通用している“ぽっちゃり型”には絶対的な共通点がある。それは「柔らかさ」だ。打撃同様守備でもハンドリング、身のこなしなどの柔らかさが必要だ。
ここに勝負強さが加われば打線の中心としてラインナップに入ることができる。これだけは誰にも負けない、という強い意志を持った選手はプロでも成長スピードは速く活躍する傾向にあるので楽しみでならない。
全てを網羅しているわけではないですがJR東日本の西田光汰投手、大商大の大西広樹投手、興南の宮城大弥なども非常に楽しみな素材。そして長年プロ野球界に携わった智弁和歌山・中谷仁監督の指導を受け育った黒川史陽内野手は個人的に注目している。
中谷監督は苦労人であり優れた指導者だ。その指導を受け打撃、守備ともにまだまだ伸びしろのある選手が今後どのように育っていくのか見届けていきたい。
いずれにしても今後のプロ野球界を背負う選手たちが一体どのチームに入り、どのような歩みを進めていくのか。ドラフトはゴールではなくスタートだ。彼らの行く末をこれからも見守っていきたい。
◇森脇浩司(もりわき・ひろし)
1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。14年にはソフトバンクと優勝争いを演じVの行方を左右する「10・2」決戦で惜しくも涙を飲んだ。17年に中日の1軍内野守備走塁コーチに就任し18年まで1軍コーチを務めた。球界でも有数の読書家として知られる。178センチ、78キロ。右投右打。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)