田中将大、メジャー6年目で“手にした”新たな課題 「それを乗り越えるために」
マリナーズの菊池にボールの握りをアドバイス
「こっちに来てから感じてなかった部分、今までになかった部分だと自分では捉えているので。同じことの繰り返しじゃない分、いいかなとは思ってますけど。それを乗り越えるために、何となく自分で思っている部分はありますけど。だからそういうところを、またシーズンが始まるまでにレベルアップさせたいですね」
具体的に掘り下げることはしなかったが、その壁が、「厚く、高い」、未体験のものであったことは確かだ。
今季、ローテーションを守り通し、2年ぶりの年間162の規定投球回に到達。挙げた11勝で日本人初の6年連続2桁勝利を記録した。その一方で、防御率は17年に次ぐ4点台となり自己ワースト2位。飛ぶとされる公式球は昨年よりは縫い目が低くなり、宝刀スプリットの落差を出せなくなった。その対策に夏場から試行した「深く握る」フォークボール型が奏功している。ただ、その握りも、時には元に戻したりする“試行錯誤”を繰り返していたと、ロマイン捕手が明かしてくれた。
高い修正能力で乗り切ったシーズン。田中は、自身が苦しんだ“部分”を日本時代に接点のないルーキーの菊池雄星に惜しみなく伝えている。シアトルでマウンドを分かつ8月27日の前日だった。外野でキャッチボールをする田中に小走りで挨拶に出向いた菊池に田中は即席の講義を行った。
少し開いた右の人差し指と中指を立ててボールの押し込み方を菊池にアドバイスする場面があった。田中にしてみれば“スプリット”だが、菊池にしてみればそれとほぼ同じ握りからリリースする“チェンジアップ”。6月から実戦で多投し出したその球に、参考としたいのは容易に察しが付いた。あの時、菊池は「いろいろお聞きしたいことがあったんで。ついつい、聞いちゃいました。めったにお会いできないので」と口角を上げた。
得たものを人と分かつ度量――。
苦しみ抜いたメジャー6年目に、田中が幅を広げたのは投球だけではなかった。
(木崎英夫 / Hideo Kizaki)