【プレミア12】周東、甲斐野が欠かせないピースに 元オリ監督森脇氏「大きな意味を持つ大会」

アメリカ戦での1敗がチームをさらに強くさせた

 語るまでもないが初回以降を無失点リレーで凌いだ投手陣も見事。強打の韓国打線、そして比較的狭い東京ドームという地で最大限の力を発揮した。日本の“お家芸”ともいえるバッテリーを含めた守りの野球を見せられたのではないか。

 アメリカ戦での1敗がチームをさらに一つにしたと思う。あの試合ではどこか本来の日本らしい野球ができていなかった。少し状況判断が出来ていなかったり、ミスをしてはいけないという心理から積極性に欠ける場面もあったが、その負けを引きずらなかったことが大きい。肩の荷が下りたのか、ふっきれた侍の姿があったように見えた。打線が点から線、そして円となり勝ちきるゲームを作っていった。

 今大会は誰一人欠くことができないチームではないだろうか。先発、控えなど役割はあるが誰が試合に出ても「何かやってくれる」という期待感、そして結果を残し稲葉監督の采配に応えた。ベンチ入りした選手全員が戦力として働き、チームが一丸になる駒を揃えたのも大きかった。

 丸に関しては、移籍一年目で日本シリーズまで戦い抜き一息ついているところでの急遽の招集だったが、タフさ、ひたむきな姿勢には改めて頭が下がる。坂本も体調が良ければバッティングで苦しむことはなかったと思うが最後に存在感を示し、2番坂本がしっかり機能した。周東、甲斐野は世界大会に欠かせないピースであることを存分に示したし、更に大きな自信を得たことだろう。何より稲葉監督が一番手応えを感じ、しっかり東京五輪を戦うイメージが出来たのではないだろうか。いずれにせよ、今後に向けても沢山の収穫があり大きな意味を持つ大会だった。

 中軸の鈴木、浅村がコンスタントに役割を果たしたことで、序盤に不振だった丸、坂本をカバーし大きなプレッシャーを与えず復調することができた。お互いがカバーし合え、そしてチャンスを手にすることができるのが集団スポーツ野球の素晴らしいところだ。それを実践して見せた稲葉監督含め選手たちの躍動は多くの方に感動を与え、被災された方々には大きな勇気を与えることが出来たと信じたい。来年はいよいよ東京五輪が始まる。新しいメンバーも加わりチーム力はさらにアップし、今以上にファンの方々を楽しませてくれるはずだ。まずは10年ぶりの世界一を心から称えたいと思う。

◇森脇浩司(もりわき・ひろし)

1960年8月6日、兵庫・西脇市出身。現役時代は近鉄、広島、南海でプレー。ダイエー、ソフトバンクでコーチや2軍監督を歴任し、06年には胃がんの手術を受けた王監督の代行を務めた。11年に巨人の2軍内野守備走塁コーチ。12年からオリックスでチーフ野手兼内野守備走塁コーチを務め、同年9月に岡田監督の休養に伴い代行監督として指揮し、翌年に監督就任。14年にはソフトバンクと優勝争いを演じVの行方を左右する「10・2」決戦で惜しくも涙を飲んだ。17年に中日の1軍内野守備走塁コーチに就任し18年まで1軍コーチを務めた。球界でも有数の読書家として知られる。現在は福岡6大学野球の福岡工大の特別コーチを務め、心理カウンセラーの資格を取得中。178センチ、78キロ。右投右打。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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