西武メヒアが楽天守護神・松井を“攻略”できた訳 3打席の詳細から理由を探る
甘く入ったチェンジアップを逃さず流し打ち
○5月4日(9回裏・同点2ラン)
続けて、5月4日の打席についても見ていきたい。2点リードの9回裏にマウンドに上がった松井は先頭の中村剛也内野手を一ゴロに打ち取るが、続く外崎修汰内野手を四球で出塁させた。1死一塁の状況で、辻監督は木村文紀外野手の代打としてメヒア選手を送り込んでいる。その場面での配球は以下の通りだ。
前回の対戦では、最後にチェンジアップから直球に変えて被本塁打を喫した。それも影響してか、この打席では直球を使わず、3球ともチェンジアップで勝負している。だが、前回の対戦と同じように、メヒアはストライクとなった1球目、外角高めに外れた2球目ともに反応せず。バッテリーはなおもチェンジアップを要求するが、その球はど真ん中近辺に向かう失投となる。
メヒアはこのチャンスボールを逃さなかった。豪快なスイングで流し打った打球はライトスタンドの最前列に飛び込み、起死回生の同点2ランに。自らの失投でまさかの同点劇を招いてしまった松井投手は、ボールの行方を目で追った後にがっくりと膝に手を置き、しばらくの間はそのまま動くことができなかった。
被弾直後の松井の反応にも如実に表れていた通り、打たれた球は完全なコントロールミスだった。しかし、前回の対戦と同様、変化球に全く反応しないメヒア選手の打席での所作が、バッテリーにとっては不気味に映った可能性もある。
メヒアは試合後のお立ち台で、「松井投手という本当に素晴らしい投手が相手だったので、ホームランを狙うというよりは、しっかりといいコンタクトをするというのを心掛けて打席に立ちました。結果的に同点になるホームランを打てて、本当に良かったと思います」と振り返っている。振り回すことなく冷静に打席に立てていたことが、このコメントからもうかがえる。
この打席に関しては、バッテリーの組み立て、メヒアの反応ともに、いわば今季初対戦の延長線上という趣だった。だが、それから約3か月半を隔てた3本目の本塁打の際には、また違った傾向が示されてくる。
○9月20日(9回裏・サヨナラ2ラン)
その後、9月20日までの間にメヒアと松井は2度対戦。一邪飛となった7月24日の打席では、ストレートが3球、チェンジアップとカットボールが各1球と、複数の変化球を織り交ぜた攻めを展開。メヒアが10球粘って四球を勝ち取った9月7日の対戦では、ストレートが7球、カットボールが2球、スライダーが1球と、ストレートを軸に変化球を交えた配球を見せていた。
そして、今季5度目、かつ最後の対戦が9月20日に訪れた。同点で迎えた9回裏にマウンドに上がった松井は、先頭の山川穂高内野手にいきなり安打を許してしまう。しかし、ピンチバンターとして起用された熊代聖人外野手にバントを許さず、1死1塁と走者を進めさせずに代打のメヒアを迎えた。そこからの配球は以下の通りだ。