【野球と記録】野球はなぜ「記録のスポーツ」に? 独自のデータを解析、配信する民間企業が誕生
NPBは1989年にBIS導入、コンピューターでの一元管理始まる
1980年代に入ると、ベースボールマガジン社から「ベースボールレコードブック」が刊行されるようになり、一般のファンも膨大なプロ野球記録を手にすることができるようになった。
NPBは1989年にプロ野球データベースシステム(BIS)を導入。プロ野球データのコンピューターでの一元管理をスタート。初代室長には宇佐美徹也が就任した。
BIS導入後の1991年、NPBは一軍の試合に1試合でも出場した選手のキャリアSTATSを網羅した「ベースボールエンサイクロペディア」を刊行。この本は1998年にも刊行された。
2005年にはNPB公式サイトが立ち上がる。このサイトではNPBの1軍、2軍の記録がオンタイムで公開された。また選手の通算記録のランキングなども掲載されている。近年は、NPBの公式戦に出場した全選手のキャリアSTATSを見ることができるデータベースも公開している。
2001年にはスポーツデータの解析、配信を行うデータスタジアムが創立される。2011年にはデルタ社が創立された。NPB発表のデータだけではなく、独自の分析を行うこれらの民間企業はチームや選手にもデータを提供している。
アメリカでは21世紀に入ってセイバーメトリクス系のデータが急速に普及。MLB公式サイトもセイバー系のデータを積極的に取り入れているが、NPB公式サイトや主要メディアではセイバー系のデータはほとんど掲載されていない。
セイバーメトリクス以降、アメリカでは新しい指標が続々と発表され、それとともに野球そのものも変化しているが、日本では21世紀以降、「野球記録」の分野はやや停滞している印象がある。
最近はNPBの11球団がトラッキングシステムを導入し、野球のデータ化はさらに進んでいるが、特に一般のファンが記録を楽しむ分野で、さらなる充実が求められるだろう。(文中敬称略)
(広尾晃 / Koh Hiroo)