「日本で野球を楽しめていたかな?」 楽天加入の牧田を自問させた米国での経験
野球教室に参加し、悩める小学生たちに野球の楽しさを伝える
今季までパドレス傘下マイナーでプレーし、来季から楽天に新加入する牧田和久投手が22日、神宮球場で開催された「よしもとエンジョイベースボール」に参加し、約50人の小学生と野球の楽しさを味わった。野球で悩みを持つ子どもたちを対象としたイベントでは、中学で野球を続けたいが男子とパワーの差が生まれるために続けるか悩むという少女の質問に返答。「僕もアメリカ人選手にはパワーでは勝てないので、自分の良さを出すことを考えた。パワーじゃなくても男子に勝てる部分はあるから、自分の良さを見つけて、ぜひ続けてほしい」とエールを送った。
2年を過ごしたアメリカでは、自身の長所について再認識したばかりではなく、「本当に改めて野球の楽しさと厳しさを学んだ」と振り返る。2018年にパドレスに移籍し、同年はメジャーで27試合を投げたが、オフにメジャー登録40人枠から外れた。傘下3Aで開幕を迎えた今季はメジャー昇格を果たしたが登板機会はなく、2Aと3Aで合計43試合を投げ、6勝3敗3セーブ、防御率3.33の成績だった。
渡米前に所属した西武では、勝利の方程式の一角として欠かせない存在となっていたが、アメリカでは結果が出ずに2Aまで経験。「今まで野球選手の中でもうまく行き過ぎていて、常にレギュラーだった。でも(アメリカでは)そういう枠も掴めなかった。日本よりも厳しいことを経験できた」と話すが、そこに悲壮感は漂わない。むしろ「正直まだ向こうでやりたかった気持ちはありました」と言えるほど、自身にとって成長のきっかけになったと考えている。
アメリカを経験し、野球との向き合い方が変わったという。「アメリカでも、どこの世界へ行っても、もちろん結果は大事」と前置きした上で、こう言葉を続けた。
「(日本でプレーしていた時は)純粋に、本当に野球を楽しめていたかな?と自問自答した中で、ちょっとオンとオフがなかったと言いますか、視野が狭くなっていた部分がある。子どもの時って勝ち負けはありますけど、結果はそこまで求められなかった。仕事ではないので、好きな野球をやれていた。そう考えると、日本では純粋に野球を楽しめていなかったなって。野球の楽しさは、アメリカに行ってからできてきた感覚ですね」
牧田が経験した2Aは、日本の2軍と比較にならないほど過酷な環境に置かれる。遠征地まで10時間を超えるバス移動は珍しくなく、またトレードや戦力外通告、解雇など選手の出入りも激しい。中南米、アジアなど多国籍チームでも、選手がそれぞれに持つ野球を楽しむ気持ちは一緒。「チームの雰囲気も良かったですし、絆が深まったチームになっていくんだなっていうのも感じられた。みんながいい方向を向いて1つになれば強いチームになっていく」という自身の体験を、新加入する楽天で還元していくつもりだ。
年明けには、阪神の福留孝介外野手と一緒に自主トレーニングを行う。牧田が志願し、実現する初コラボでは、同じくアメリカを経験した先輩から様々な学びを得ようと画策中だ。
「やっぱり経験した者にしか分からないことはあると思う。こういう環境を設けてもらうことは、なかなかない経験。バッターがどういう風に考えているのかとか、いろいろ話をしながら吸収していきたい。新たな場所で新たなことに挑戦するのは、非常に人生の中で大事なことだと思うので」
2020年から始まる楽天・牧田の挑戦に期待したい。
(佐藤直子 / Naoko Sato)