巨人が初めてフィリピンで野球教室 “未踏の地”の環境を通じて見えたこと
散乱した大小の石、雑草だらけのグラウンド、予想外の出来事乗り越え…
巨人のフィリピン初となる野球教室「ミンダナオ・ユース・ベースボールキャンプ2020」が11日、ダバオ市ナショナルハイスクールで開催された。小中学生300人に向け、元日本ハム、巨人の投手で現在球団広報、マニラ日本人学校出身でもある矢貫俊之氏、元横浜ドラフト1位で巨人球団職員の北篤氏、かつて背番号15をつけ1軍で活躍した現球団スコアラー室の木村正太氏、東南アジアで野球振興活動をする元巨人左腕の柴田章吾氏がサポート講師を務めた。
気温は35度近くまで上がった。しかし、元プロ野球選手の指導を直接受けられるとあって、講師も子供たちも暑さや疲れも忘れるほど、活気に溢れた。
まずは「グラウンドに落ちる石やゴミを、誰が一番早く20個集められるか?」と、グラウンド整備を兼ねたウォーミングアップ。わずか、5分ほどで袋いっぱいのゴミが集まり、中にはソフトボールくらいの石も転がり、「ケガをしないためにもグラウンドをきれいにして使うことが大事」と説くOBの言葉に子どもたちも、大きくうなずいた。
練習では午前中は小学生、午後は中高生を対象とし、ジャイアンツアカデミーのメソッドをベースとして指導を実施。木村氏から投球指導を受けたJohn Reve君(12歳)は「今日のベースボールキャンプに参加して、ジャイアンツの選手になりたいという夢が出来ました。普段の練習からも、今日教わったことを意識して続けて行きたいと思っています」。John Lyodくん(18)は「本当に素晴らしい経験、練習方法を教えてもらいました。特にピッチングでは『1.2.3!』とリズムを意識して投げてみたらと、木村正太さんに教えてもらい、スムーズに投げることができるようになりました」と目を輝かせていた。
開催前は、野球用具が不足しているため、現地のスタッフと協力して、新聞紙ボール約200個をこの日のために作成。OB講師を驚かせたのは現地のグラウンドコンディション。先乗りした木村氏、北氏が下見に訪れると、練習場所と想定していたグラウンドには雑草が茂り、大小の石が散乱している状況。イベントまでに全面を学校関係者は草刈りをしてくれたが、できたのはグラウンドの半面のみ。ミニゲームを行うためのラインを引こうにもラインカーが無く、「物があるのが当たり前ではなく、物が無い中でいかに機転を利かせられるかが大事」とOBの北氏も日本と同様の仕様で環境を整備することの難しさを痛感した。この経験を持ち帰り、伝えれば、日本の子供たちにもプラスになるだろう。
練習の終わりには、ジャイアンツの選手が練習で使った硬式球480球(40ダース)を、参加した各チームに分けて贈呈。用具が不足する現地の子どもたちにとっては「使用済のボールでも、僕らにとっては新球と同じくらいきれい。大事に使いたい」と喜んでいた。
巨人は2015年に野球普及・振興のため、JICAボランティア事業(青年海外協力隊等)と業務提携。これまでも青年海外協力隊員が派遣される国・地域にジャイアンツアカデミーのコーチを派遣してきた。元球団OBで東南アジアを中心に野球振興活動をする柴田氏の協力もあり、今回は初めてフィリピンに巨人として講師を派遣。ダバオは経済的にも困窮しているが、今では少しずつ、野球が普及してきている。矢貫氏は「フィリピンの子供たちはすごい。身体能力も高かった」と驚いた様子だった。
最後は巨人の選手が練習で使った硬式球480球を贈呈。活動は14日まで行われる予定となっている。フィリピンの子供たちの目に映った巨人のユニホームは一生、忘れることはないだろう。
(Full-Count編集部)