レッズ秋山をプロ、MLBに導いた両親の教育法 「雨戸を閉める、は忘れない」
秋山母が子供たちに明かした“自発的に、楽しく、続けられる”仕組み
西武から国外FA権を行使してレッズに移籍した秋山翔吾外野手。2015年にNPB最多記録となるシーズン216安打を達成すると、そこから5シーズンに渡ってフルイニング出場も達成。技術だけでなくそのタフさ、継続力も持ち味のひとつだ。そんな秋山は幼少期、両親にどのように育てられたのか。
横浜市で19日に開かれた、「神奈川県学童野球指導者セミナー」で特別講演を行った秋山は、自身の少年野球時代を振り返った。秋山の父は野球好きで、物心つく頃には秋山にバットとボールを与え、厳しい練習を課したという。「僕の家は裕福な方ではないが、それだけ時間を費やしてくれたし、何でもやってくれる父だった」という。
しかし、秋山は父に頼り切りになるのではなく毎日、自ら家で素振りに励み、神社の階段に向かってボールを投げた。「1日100回素振りしていた。ストライクゾーンを9分割し、1か所10回ずつ振って、最後10回は好きなゾーンで振っていたのを覚えている」。
秋山がそういった地道な努力を習慣化できたのは、母の知恵も手伝っている。「野球のことだけでなく、母が作ったチェックシートがあった。例えば窓を開ける、歯を磨く、ランニングできたか、素振りはできたか……と項目がある」。それらの項目に対しても「自分からやった」「言われてからやった」「言われてもやらなかった」の3つの枠があり、自分ができたところにチェックを入れる。やれば何でもいいというのではなく、自発的にできることを目指し、できなかったことも可視化する仕組みだ。
このチェックシートは兄弟もやっていたといい、「雨戸の開け閉め、はすごく覚えている」と、生活の何気ない動作まで記憶に叩き込まれるほどの威力だ。子どもであれば地道な努力よりも目先の楽しいことに気が飛んでしまいがちだが、「達成していくという喜びや満足感は必要。ゲーム方式、じゃないですけど」と楽しみに変え、継続に繋げた。今でもその経験から毎日欠かさず体を動かしているといい「メジャーにいったからといってやめようというのはない」と環境を変えても続けるつもりだ。
打てない時も、体調が悪い時も乗り越えて、フルイニング出場を続けた秋山の「1回すごくできて達成感を得るより、続ける方が難しい」という言葉には重みがある。そしてその継続の効果も秋山自身が証明しているだけに、子どもから大人までが見習うべきところがありそうだ。
(臼井杏奈 / Anna Usui)