32年ぶり選抜逃した西武台、指揮官が掲げる夏への課題 「自分で考え、判断し、動かないと」

野球部のスローガンは「自主、自立、自治」、指揮官は「サインばかりに頼っていては駄目」

 一方、投手力はどうか。主戦は左腕の増田優真で、前チームからのエースだ。健大高崎(群馬)に9回サヨナラ負けを喫した昨秋の関東大会準々決勝。先頭打者を四球で歩かせると、送りバントと安打で1死一、三塁のピンチを招き、二ゴロが失策となって痛恨の敗戦。

 増田は猛省する。「あの試合では失点した5イニングで、4イニングも先頭打者に四球を与えてしまいました。自分の持ち味はコントロールですが、秋はアバウトな制球力しかなく、大事な場面で四球が多くなった」と説明。まずは春の県大会で優勝を目指すそうだが、達成するための条件について「警戒が強まるけど、それでも抑えられる投球をして勝ちたい。制球力にも磨きを掛ける」と昨年10月21日、高崎城南球場での健大高崎との9回裏の苦汁は2度となめないとの決意を示す。

 決意と言えば、河野監督の決意も並々ならぬものだ。「勝利至上主義は私のモットーではない。学校側がそれを求めるのなら退任します」とまで言い切る。野球部のスローガンは「自主、自立、自治」である。指揮官は「ロボットではないのだから、サインばかりに頼っていては駄目です。自分で考え、判断し、動かないと」と述べる。部活動も学校教育の一環、その延長線上にあると考えている。なるほど、生徒の手本になる監督であり、教育者だ。マネジメント能力も高いと推察する。

 そんな指導者に導かれ、西武台は野球部の歴史を塗り替える戦いに挑戦する。

 81年の創部以来、春季県大会は3位と8強が1度ずつ。夏にしても88、95、98、01、10年のベスト8が最高成績だ。主将の小松大空は「選抜大会に出られたとしても、春と夏に勝たないといけない。これからどのチームも力を付けてくるので、それに負けない粘り強さを身に付けたい。練習で投打を徹底的に鍛え上げます。今回出られなかった悔しさを春と夏に晴らすために努力する」と捲土重来を誓った。

 32年前の第60回選抜高校野球大会に初出場した往時、西武台は「虹の球児」と呼ばれた。後輩たちがこの春と夏、空高く“優勝旗”というアーチを架けられるか。

(河野正 / Tadashi Kawano)

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