開幕延期を何とか“チャンス”に… 広がるファンサービスに見る球界の未来と希望

ソフトバンクのデニス・サファテ、和田毅、ウラディミール・バレンティン【写真:藤浦一都】
ソフトバンクのデニス・サファテ、和田毅、ウラディミール・バレンティン【写真:藤浦一都】

開幕の延期で球団や選手がSNSなどで積極的にファンサービスを展開

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で開幕が延期となっているプロ野球。4月24日を目指していた新たな開幕も感染の拡大が止まらず、3日に行われた12球団代表者会議で無期限延期が決まった。新たな開幕日は未定で5月下旬以降になることが決まった。

 感染拡大予防のために活動を休止する球団も次々に出てきており、選手にとっては難しい調整を強いられることになる。ファンにとっても、楽しみにしていた開幕がどんどん遠ざかっていき“野球ロス”の日々で退屈さも増していくことだろう。暗いニュースの連続で、気分も陰鬱としてきてしまう。

 オープン戦の無観客開催が決まった2月末から1か月以上が経った。この間、選手たちが、そして我々のようなメディアの人間たちもが、つくづく感じたのは、ファンのありがたみ、そしてファンの大事さだった。大観衆で埋まった球場でプレーできることがどれだけ選手たちに力を与え、昂らせてくれるか。その環境が当たり前ではないことを、多くの選手の口から聞いた。

 確かに新型コロナウイルスの感染拡大、開幕延期は残念なニュースだ。マイナスな面しかないようにも思える。ただ、大したことではないかもしれないが、プラスを感じる部分がある。それが球団や選手が行うファンのために取り組む、ファンサービスが広がってきたことだ。

 開幕の延期が決まり、チームの活動が休止となる中、球団ごとに何かファンのためにできないかと、様々なアイデアを捻り出している。普段、取材させてもらっているソフトバンクは公式Youtubeチャンネルで動画を公開し、ファンへアプローチしている。選手によっては自身のインスタグラムやツイッターを駆使し、ファンとの接点を増やそうとしている。

 インスタライブでファンの質問に答えたり、自宅待機中の生活の様子をアップしたりする選手も。和田毅投手やデニス・サファテ投手は“キッチンチャレンジ”として料理をする様子を公開し、ウラディミール・バレンティン外野手はファンとインスタライブのコラボ配信を行ってファンと会話するサプライズを行った。

 MLBの日本人選手でも前田健太投手が自宅でできるトレーニング方法を自身のYouTubeチャンネルで紹介したり、以前からではあるが、ダルビッシュ有投手もYoutubeで動画を公開したりしている。選手がそれぞれファンのために何かできないか、と動いている。

 開幕が延期となっていることは全く喜ばしくないが、こういった選手が積極的にファンサービスを行い、自ら何かを発信していくことは大きな取り組みだと感じている。ファンの”野球ロス”を少なからず埋めてくれるだけでなく、素の表情を見れたり、グラウンドから離れた姿を見ることで新たな選手の魅力の発見に繋がる。開幕を迎えてからも、そしてその先もずっと、いろいろな形でファンサービスとしての形が生かされていけばいい、と感じる。

 プロ野球界にとっては未曾有の緊急事態である。ただ、マイナスなことばかりを考えていてもしょうがない。できることは何か、今だからこそファンのために何ができるか。そんな企画が数多く生まれ、開幕を迎えてからも、球団、選手、ファンがより密接に、野球界を盛り上げていけるチャンスにしていけることを願う。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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