野村監督から「野球の話ができる男」と呼ばれた森脇氏 仙台で恒例だった名将との密談
監督経験者では落合博満氏とともに野球観を認められていた森脇浩司氏
2020年シーズン開幕を前に球界が悲しみに暮れたのは野村克也さんの訃報だった。戦後初の三冠王、監督としてもヤクルトを3度の日本一に導くなどプロ野球界に残した功績の大きさは計り知れない。そんな中、野村氏が「野球の話ができるのは…」と認めた“指導者”、監督経験者がいる。著書の中で紹介されているが一人は落合博満氏。もう一人がオリックスで監督も務めた森脇浩司氏だった。
野村監督が楽天の監督を務めていた時期、森脇氏はソフトバンクで1軍内野守備走塁コーチ、ヘッドコーチなどを務める期間があった。楽天の本拠地で試合が行われる時、森脇氏は必ず相手ベンチで野村氏を訪ね、野球談議を行っていた。試合前にコーチがライバルチームの監督と話し合う姿に報道陣たちも興味深々だった。
「南海の大先輩です。挨拶に伺っているうちに……。純粋に人間・野村克也、そして、野村さんの野球観に興味があり学びたかった。試合前に対戦チーム同士の指導者がベンチで話す光景はあまり考えられなかったと思います。記者の皆さんと野村監督の囲みが終わった時間に色々とお話させていただいたことは私のかけがえのない財産で今でも鮮明に思い出します」
自軍の選手がグラウンドに出てくる時には話は終わらせるというルールを自身で決めていたとはいえ、これから試合をする“頭脳”同士の濃密な時間……。不自然な光景であることには違いない。ただ、純粋に学びたかったのだという。
野村氏が楽天を指揮した2006年から09年までは田中将大、岩隈久志の球界を代表するダブルエースが存在したが、十分な戦力が揃っていたわけではなかった。常勝軍団といわれたホークスで王監督の右腕としてチームをまとめた森脇氏は野村氏に多くの質問を投げかけられた。
「『主力は森脇に任せている。特にややこしい奴はね』ってワンちゃんがいつも言っているがベテラン選手、高給取りが多くいる中、どうやって操縦してるんだ?」
「個性に富んだ選手に指示する時は何を考えている?」
「勝てるチームに必要な基盤はどうやって作ったんだ?」