なぜ野球は9人で行うのか? 「3」に縁がある野球史、アメリカ史にまつわる話
野球は「3」という数字に縁が深いスポーツ?
野球は「3」という数字に縁が深いスポーツだ。打者が投球を3回空振りすると三振でアウトになる。3つのアウトでチェンジ。さらに3の3倍の9イニングで試合終了。そして出場する選手も9人。野球が「3」という数字を大事にするのは、アメリカがキリスト教の一派であるプロテスタントの国だからという説もある。東方の三賢人、三位一体(神と子と精霊)、三大祭(クリスマス、復活祭、精霊降臨祭)などキリスト教にとって「3」は神聖で重要な数字なのだ。
だからアメリカのナショナル・パスタイムである野球は「3」と、その派生である「9」を大事にするようになった、という理屈だ。こじつけのような印象だが、今でもこういう説明をする人がいる。
ただ、1973年以降、野球は「10人」でやるスポーツになりつつある。この年に、アメリカン・リーグが「指名打者制(Designated Hitter)」を導入したのだ。これによって野球は8人の野手と1人の指名打者と1人の投手でプレーする「10人のゲーム」になった。
いまだにMLBのナショナル・リーグ、NPBのセントラル・リーグ、日本の高校野球などは指名打者制を導入していないが、世界のプロ、アマの野球の大半は、指名打者制を導入している。MLBとNPBでは、指名打者制を導入していないリーグと導入しているリーグの間で交流戦(インターリーグ)が行われているが、いずれも指名打者を導入しているアメリカン・リーグ、パシフィック・リーグが勝ち越している。
野球は9人でやるより10人でやる方が強いのか? 最近になってナショナル・リーグ、セントラル・リーグでも指名打者を導入する構想が出てきているが、伝統的に「3」「9」を大事にしてきた野球にとって歴史を動かす話だと言えるかもしれない。
(広尾晃 / Koh Hiroo)