「傷薬を見つけるのもマウンド」 ハム左腕“無敗記録”を見守った投手コーチの言葉

日本ハム・公文克彦【写真:石川加奈子】
日本ハム・公文克彦【写真:石川加奈子】

当時1軍投手コーチの高橋憲幸氏が語るリリーフ投手のメンタル

 プロ野球開幕を心待ちにしながら日本ハムの取材ノートを整理していたら、思い出深い言葉を再発見した。「F取材ノート~心に残ったあの言葉」として改めて紹介したい。今回は、マウンドに上がるリリーフについて語った高橋憲幸前投手コーチ(現アマスカウト)の言葉。

「ピッチャーは投げて打たれたら傷になる。その傷薬を見つけるのもマウンド」

 公文克彦投手がデビューからの連続試合無敗記録を「165」に伸ばして日本新記録を樹立した昨年8月。当時1軍投手コーチでブルペンを担当していた高橋コーチにこの記録の価値について取材していた時に出てきた話だ。

 リリーフは調子の良し悪しに関わらず、常に準備をして要求に応じてマウンドに上がる。現役時代にリリーフ左腕として272試合に登板した高橋コーチは「必要なのはずる賢さをやせ我慢」と笑った後で「一番の栄養源は抑えること」と言った。さらに続けたのが冒頭の言葉だった。心身ともにタフさが求められるリリーフの仕事がよく分かる。

 打たれても次は絶対に抑えてやるという心意気でマウンドに上がること174試合。どう転ぶかわからない試合もたくさんあった中で公文に負けが一つもつかないのは、やはり価値がある。高橋コーチが高く評価していたのはメンタル面だ。「淡々と仕事できるのがいい。これだけ出て、試合が左右される場面でもいって、無敗というのはしっかり仕事ができているということ。点を取られてもカバーしてもらえるというのも、持っているものがある」と話していた。

 新記録をつくった昨年8月29日の西武戦の後、公文は「今年も何回も負けそうになったことがあったけど、野手の方に助けられているので」とチームメートに感謝した。マウンドで傷薬を見つけてどんどんタフになっていった左腕は、巨人時代の4年間で15試合だった登板数を日本ハム移籍後、17年41試合、18年57試合、19年61試合と大幅に伸ばしている。「もっと信頼を得て、いいポジションで投げたい」と意気込む今季、さらなる飛躍が期待される。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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