打線固定の獅子と“猫の目”の鷹 対照的な西武・辻とソフト・工藤采配
球場変えずに6連戦「ああ、また一緒か……また明日から3つだと思ってやるしかない」
25日の西武-ソフトバンク戦は、ホークスが4-2で競り勝ち対戦成績を2勝1敗とした。今季コロナ禍による変則日程で生まれた、メットライフドームに腰を据えての6連戦は後半に突入する。
西武先発の本田は5回を投げ、バレンティンのソロ2発による2点に抑えたが、打線の援護なく敗戦投手に。辻発彦監督は試合後、「ホームラン2本だけだからもったいないけど、長打のあるバッターにはそれだけの“圧”があるんでね……」と肩を落とした。デスパイネ、グラシアルのキューバ勢を欠いている代わりに新たにバレンティンを加えた、今季の鷹打線の脅威をひしひしと感じていた。
辻監督とソフトバンク・工藤公康監督の采配は対照的だ。たとえば、辻監督は開幕後6試合を通じ、打順、守備位置ともにスタメンを一切変えていない。この我慢の姿勢は、日本ハムとの開幕3連戦で1番打者として14打数1安打、打率.071の不振だったスパンジェンバーグが、23日のソフトバンク戦では来日1号満塁弾を含む5打数4安打と爆発する形で実を結んだ。
もっとも、辻監督は「(野手最年長の)中村と栗山は休ませながら使う。捕手も1人で6連戦全部というのはキツイ」と語っており、いずれスタメンに手を加える日は来る。
一方のソフトバンク打線は“猫の目”。開幕後6試合の1番打者は上林→牧原→栗原→上林→栗原→栗原と目まぐるしい。西武とのこれまでの3試合では、スタメン二塁手が三森→牧原→川島と毎日違った。そしてこの日、これまで専ら指名打者だったバレンティンが今季初めて左翼を守り、左翼を守っていた長谷川が指名打者に回った。開幕後6試合のスタメンで打順・守備位置ともに1度も変わっていないのは、「3番・中堅」の柳田だけだ。
打撃不振だったバレンティンは守備に就いたことが気分転換になったのか、今季1号、2号を連発。今季初スタメンの川島も、6回に西武2番手の浜屋から貴重な追加点となる1号ソロを放って、打線組み替えの効果を見せつけた。
両監督の采配は、どちらかが正しいというものではなく、性格や野球観が反映されていて非常に興味深い。
昨年も、一昨年も、レギュラーシーズンで優勝した辻西武に、クライマックスシリーズ(CS)で工藤ソフトバンクが“下剋上”を食らわせ、そのまま日本シリーズも制する展開。昨季の対戦成績も、ソフトバンクの13勝12敗だった。辻監督にしてみれば、現役時代にともに西武黄金時代をつくった間柄で5歳下の工藤監督に、これ以上苦杯をなめさせられるわけにいかないだろう。
本来なら3試合ごとに相手が変わり、気分も変わるところだが、今回は相手も球場も変えずに6連戦を行うパターンがしばらく続く。辻監督は「ああ、また一緒か……。まあ、先発ピッチャーはお互い変わるし、気持ちを切り替えて、これで3つ(3連戦)が終わったと、明日からまた3つだと思ってやるしかないでしょ」と苦笑い。今季も辻・工藤両監督の神経戦が始まった。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)