なぜ巨人坂本はインローを左翼席に運べたか? 分析のプロが注目した好打者の“共通点”
巨人や2009年WBC侍ジャパンでチーフスコアラーを務めた三井康浩氏が解説
■巨人 5-0 中日(3日・東京ドーム)
高い技術がいくつも凝縮された一発だった。巨人の坂本勇人内野手が3日の中日戦(東京ドーム)、0-0で迎えた6回1死、先制となる本塁打を中日先発の大野雄から放った。内角低めのスライダーを最後は“左手1本”のフォロースルー。衝撃ともいえる打撃で左翼席最前列へ放り込んだ。そんな本塁打がなぜ打てたのかー。巨人や2009年WBC侍ジャパンでチーフスコアラーを務めた三井康浩氏に分析してもらった。
三井氏がポイントに挙げたのは、坂本の“目付け”だった。坂本が本塁打したのは6球目。内角球はそれまで2球。初球のボールになるスライダーと、逆球となった3球目のツーシーム。相手バッテリーは初球以外は外中心の配球だった。5球目の外角直球はファウル。カウントは3ボール2ストライクとフルカウントになった。
「中日バッテリーは坂本選手が(外に)押っ付けてきていると読んでいた。左投手だったら、右打者には外角高めの直球か、ひざ元へ落とすインコース低めの弾だと空振りを取りやすいゾーンになります。そこで内角のスライダーを選んだ」
坂本はファウルした球でも分かるように、相手の攻め方から追い込まれた段階で外の意識を持っていた。それでも、あの内角の難しい低めのボールが打てたのは「外角を待っていたから」と三井氏は分析する。
「気持ちがアウトコースにあったから、うまく拾えました。追い込まれていたから、右中間を意識していたので、ボールを長く見ることができていましたね」
もしも、外角ではなく内角攻めを続けられていたら、打者は狙いの“決め付け”が速くなり、目切りが早くなってしまう。内角が打てたのは外角への意識を持っていたからだった。
「坂本選手の持ち味である下半身の粘りと“二枚腰”(変化球が来た時に直球のタイミングで回し始めた腰を、反対方向に回転し変化球に対応する動き)でしっかりとボールを待てて、打てた。だから、ワンハンドでさばけたのだと思います」
大野雄はそれまで6者連続三振を奪うなど、完璧な内容だった。最後に投げたスライダーは「少しだけコースが甘くなった。坂本選手には甘かったですね」と三井氏。高い技術と駆け引きのぶつかり合いだった。