「野球選手の性が出た」 甲子園交流試合を戦った4人の監督たちの“特別な夏”

「2020年甲子園高校野球交流試合」が甲子園球場で開幕した
「2020年甲子園高校野球交流試合」が甲子園球場で開幕した

明徳義塾・馬淵監督「やっぱり甲子園はいい」と噛みしめた

 新型コロナウイルスの影響で中止となった選抜出場予定32校による「2020年甲子園高校野球交流試合」が10日、甲子園球場で開幕した。第一試合は花咲徳栄(埼玉)が3-1で大分商(大分)に、第二試合は明徳義塾(高知)が逆転サヨナラで6-5で鳥取城北(鳥取)に勝利した。一度は見失った目標の場所で選手たちは思う存分、野球を楽しんだ。一方で甲子園優勝監督を含む4人の監督たちも、特別な思いで、タクトを振った。

 サヨナラの打球が右翼手の頭を越え、劇的な形で幕を閉じた第二試合。明徳義塾・馬淵史郎監督は興奮を隠せなかった。「9回2死まで負けていて、逆転サヨナラ……。やることやって、辛抱強く、最後にね…やっぱり甲子園はいいですね……」と喜びをゆっくりと噛みしめた。

 最後に勝って夏を終えるのは、2002年夏の全国制覇以来。形は違うが「甲子園は注目度が違う。ここを目標に365日、やっていますから。耐えて、耐えて、目標のところに来た。最高の舞台でした」。試合は7回まで2点を取ったが、ノーヒットに抑えられていた。2-5と劣勢だった8回無死一塁から4番の新沢颯真内野手がようやくチーム初安打を放ち、そこから2点を返し、1点差に迫った。指揮官は「今日の点差はクリーンアップの差だよ」と叱咤すると、選手たちは奮起。9回、2死一、二塁と仲間が繋いでくれた絶好機を、新沢が4番の意地を見せ、サヨナラ打。馬淵采配が光った。

 百戦錬磨の指揮官も、ひとつひとつのアクションに力が入っていた。無観客でも、交流試合でも関係ない。ここはいくつものドラマが生まれた甲子園球場。興奮していたことについて「やはり野球選手の性ですよ」と笑った。これまでと同じ気持ちで振ったタクトが逆転に次ぐ逆転、息を飲む1点差の好ゲームを生んだ。

 一方、互角の戦いを見せた鳥取城北の山木博之監督は「勝って、校歌を歌えれば、最高でしたけど、本当に良い時間を過ごさせてもらいました。生徒も僕も楽しめました」と2時間27分の熱戦を振り返った。サヨナラの瞬間、選手たちの中には膝から崩れ落ち、涙を流す選手もいた。いつもの夏の甲子園と変わらない光景がそこにはあった。

「1人でも多くの選手にできるだけ、甲子園を経験させたいと思っていました。最後まで頑張った成果の場所。総力戦でこのような戦いができたことは自信になりますし、ここの土を踏めたことをこれからの人生につなげてほしいですね。2度と経験できることではありませんから……」

 指揮官は最後に言った。「甲子園は夢の場所でした」、と。

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