名門帝京は完全復活したのか? 昨秋に続く2大会準Vも、カギを握る新主将の存在
前田監督に代わりチームを引き締めた加田主将と、注目が集まるその後継者
高校野球東西東京大会は10日、ダイワハウススタジアム八王子で47年ぶりに東西決戦が行われ、東東京代表の帝京は2-3で西東京代表の東海大菅生に敗れた。昨秋東京大会に続き、2大会連続で準優勝につけた帝京だが、かつての名門は完全復活したといえるのか。チーム内からはなぜか、この日1安打1打点の活躍をした2年生に注目が集まっている。
2回、主将の4番加田拓哉外野手が左中間を破る二塁打を放ちチャンスを作ると、5番新垣熙博捕手の犠打と6番武藤闘夢内野手の犠飛で先制のホームイン。5回には1死一、三塁から先発左腕の田代涼太投手がスクイズを決め追加点を奪った。投げてはその田代が8回まで1安打無失点と好投するも、9回につかまり同点に。2番手の柳沼勇輝投手が救援するも流れを断ち切れず、逆転サヨナラ負けを喫した。
東京256校の頂点にはあと一歩及ばなかったものの、9年ぶりに東東京代表の座に返り咲いた名門・帝京。だが、コロナ禍での特殊な大会ということもあり、オールドファンの中には「帝京の復活は本物か?」と訝る声もある。
そもそも、近年の低迷の原因は時代の変化によるスパルタ指導の限界にある。選手たちが「覚悟していたよりは怖くなかった」というように、かつては鬼監督で知られた前田監督も時代とともに指導法をあらためてきたが、今度は練習から緊張感を維持するのが難しくなっていた。
そんななか、前田監督に代わる引き締め役として昨秋主将に任命されたのが大阪出身の加田だ。「ミスをしたときとか、お互いにキツいことを言い合うようにした」と指揮官に代わってお互いを律し合う自主性とチーム内競争を意識づけ。その加田が甲子園の中止で落ち込んだ際には前田監督自ら「3年生の引退試合じゃねえんだぞ!」と檄を飛ばし、加田も「あれで目が覚めました」と語るなど、主将をパイプ役とした指揮系統が機能した。
となると、気になるのは新チーム以降を率いる主将の存在。加田は自身の後継者に「武藤しかいません。2年でも3年にキツいことが言えるし、すでに内野陣のリーダー的存在。自分より気が強い面もあるし、アイツなら何の心配もない」とこの日先制の犠飛を放った後輩内野手を推薦する。
コロナ禍での特別な夏、久々にかつての鬼監督の片鱗をのぞかせた前田監督は「すぐ秋が始まる。こういう試合で3年生の姿を見て、チームが締まるという意味では大きな意義があった」と今大会を総括。日常が戻ったあと名門帝京が完全復活を遂げるかは、新主将の資質にかかっている。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)