“魔物不在の夏”に球児が感じた本音 磐城-国士舘戦で見えた新しい応援の形

「いい意味でも悪い意味でも応援はプレッシャーになる」と語った球児の本音

 アウトと思った打球がイレギュラーバウンド、無意識の中でしてしまったボーク、思わぬ転倒…予期せぬ展開が起こる時、人は“甲子園の魔物”という言葉を使う。近年ではスタンドの観衆がタオル回しや手拍子で応援に加わり、選手にプレッシャーがかかってしまうこともあった。

 例年であれば漂い始めた大逆転の空気が追う展開の磐城に加担し、グラウンドの球児の心理に影響を及ぼしていたのは想像に難くない。それがここまで数々の逆境を乗り越えてきた21世紀枠校ならばなおさらだ。

 だがその裏、国士舘の勝ち越しの場面で今度は三塁側から拍手が起こった。それは、よく言えばスタンドが試合内容に干渉しない、健全な応援のあり方だったように思う。

 この日先発出場した磐城ナインの一人は「すごく楽しかったです。やっぱり甲子園なので、最初はみんな緊張している面もあった。吹奏楽応援がなかったぶん、あの手拍子で気持ちが乗った。ありがたかったです」と話した一方で「もし満員の甲子園だったら、裏の国士舘の攻撃のときも威圧感がすごかったと思う。いい意味でも悪い意味でも、応援はプレッシャーになると思う」とも語った。

 例年であれば起こっていたかもしれない番狂わせと、実力を発揮できなかったかもしれないという球児の本音。“魔物のいない夏”、甲子園も新しい応援の形を示している。

(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)

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