強打の智弁和歌山に何があった? 中谷監督が掲げる“高嶋野球”からのモデルチェンジ
“強打の智弁”で知られる強力打線がつながらず、1得点に封じられた
新型コロナウイルスの影響で中止となった選抜出場予定32校による「2020年甲子園高校野球交流試合」は17日、甲子園球場で大会最終日を迎え、第2試合では智弁和歌山が1-8で尽誠学園に完敗した。伝統の強力打線はなぜ沈黙したのか。その裏には高嶋前監督からチームを引き継いだ中谷仁監督による、チーム改革の跡がある。
智弁和歌山は初回、5番川上珠嵐内野手の中前適時打で1点を先制。しかしその裏、先発大林優平投手が立ち上がりを捉えられ同点とされると、2回には連打を浴び打者一巡の5失点を喫した。打線は9安打もつながりが悪く、思うように反撃の糸口を作れなかった。
“強打の智弁”の異名で知られる強力打線はなぜ機能しなかったのか。就任2年目の中谷監督は昨夏から守りでリズムを作る野球を掲げ、チーム改革に着手。自主練習でも大半の時間を守備練習にあててきた。
三塁手として先発出場した平田晃将内野手は「去年は(現楽天の)黒川さんや(現DeNAの)東妻さんといったタレントが揃っていましたが、今年はそこまでの選手がいない。今年のチームは守備あっての攻撃という方針でやってきました」と指揮官の意図を代弁。2安打を放った徳丸天晴外野手は「去年の夏も経験して応援は迫力があった。応援あっての智弁和歌山だと思うので、それがないのはさみしい」と語るなど、“魔曲”ジョックロックをはじめとする伝統の応援がなかったことも影響した。
結果的にこの日は守備で流れを変えることはできなかったが、それでも「目指す野球はそのときの選手によって違う」と語る指揮官の考えは選手全員が理解している。強打だけに頼らない多彩な野球を目指し、智弁和歌山の変革はまだ始まったばかりだ。
(佐藤佑輔 / Yusuke Sato)