同点でも9回に守護神を投入する意味とは? 沢村賞右腕が語る巨人とDeNAの勝敗を分けた鍵

巨人のルビー・デラロサ【写真:荒川祐史】
巨人のルビー・デラロサ【写真:荒川祐史】

同点の9回に守護神を出した巨人、出さなかったDeNAが生んだ差

■巨人 3x-2 DeNA(1日・東京ドーム)

 巨人は1日、本拠地でのDeNA戦に3-2でサヨナラ勝ちした。同点で迎えた9回裏、無死満塁の好機に代打・吉川尚輝が右前へ打球を運んで呼び込んだ勝利。8回表に同点に追いつかれ、試合の流れはDeNAに傾きかけたが、巨人は9回表に守護神デラロサが3者凡退で締め、サヨナラの場面に勢いを繋いだ。

 現役時代はヤクルトと中日でプレーし、沢村賞にも輝いた川崎憲次郎氏は、両チームの勝敗を分けたのは「9回の投手の起用法」にあったと見ている。

 この日、巨人はエース菅野智之投手が開幕10連勝をかけて快投していたが、2-1で迎えた8回に2死一、二塁として降板。マウンドを継いだ中川皓太が、DeNAの4番・佐野恵太に打球を右前に運ばれ、同点に追いつかれた。さらに8回裏、巨人は2番から始まる好打順だったが、DeNAの3番手左腕・石田健大の前に3者凡退。川崎氏は「流れとしては、DeNAに傾き始めていましたね」と振り返る。

 だが、その流れを引き戻したのが、“ストッパー”のデラロサだった。2日前の中日戦では1点リードの9回に登板するも、制球が定まらず。1死満塁の大ピンチを迎えながら、最後は遊ゴロ併殺に打ち取って辛くもセーブを挙げていた。だが、この日は「真っ直ぐもよかったし、積極的に攻めるピッチングでした」と川崎氏。先頭の倉本寿彦を空振り三振に斬ると、大和を遊ゴロ、嶺井博希を見逃し三振に仕留め、わずか8球で締めくくった。

「巨人としては9回を0点に抑えれば、10回の延長まで持ち込めるという状況。ここでデラロサが見事“ストッパー”の役割を果たしました。この3者凡退があったからこそ、サヨナラ勝利に繋がったと思います。

 今シーズンは延長10回で試合が終わること。今の野球では9回に同点以上だったら守護神=ストッパーを起用すること。この2点を考えると、巨人はセオリー通りの投手起用で勝機に繋げました」

 一方のDeNAは、同点で迎えた9回裏に守護神の三嶋一輝ではなく、左のセットアッパーであるエスコバーを投入した。サヨナラを警戒しないといけない場面で、ラミレス監督は力強い速球を持ちながらも荒れる可能性があるエスコバーを起用した訳だが、川崎氏は「おそらく先頭が左打者の丸(佳浩)選手だったからでしょう」と見る。

「結果として、9回は先に三嶋投手を起用してもよかったかもしれません。DeNAとしては点をあげたら終わりの場面。こういう重要な局面は、確実性の高い守護神に任せた方がいい。三嶋投手もストッパーとしての誇りもあるでしょうし、周りもストッパーが打たれたら仕方ないと思える。延長があってもなくても、9回はプレッシャーのかかる場面で、誰もが投げられるポジションではありません。DeNAはここを抑えなければ延長戦には行けないのだから、まずは確実に抑えられる投手を起用し、10回にエスコバーと山崎(康晃)投手の2人を左右1枚ずつ控えさせておく選択肢もあったかと思います」

 9回に守護神を起用してサヨナラまでの道のりを作った巨人・原監督と、起用せずに流れを掴みきれなかったDeNA・ラミレス監督。わずかな采配の差が、大きな勝敗の差を生んでしまった。

(Full-Count編集部)

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