巨人吉川尚の同点打にあった巧妙な“仕掛け” 相手のスキを生んだ原監督の手

巨人・吉川尚輝【写真提供:読売巨人軍】
巨人・吉川尚輝【写真提供:読売巨人軍】

巨人でプレーし、楽天ヘッドコーチだった松本匡史氏が解説

■中日 2-2 巨人(10日・ナゴヤドーム)

 巨人が敵地で中日と2-2で引き分けた。0-1で迎えた8回無死一、二塁のチャンスで「7番・二塁」で出場した巨人・吉川尚輝内野手が右中間を破る逆転の2点適時三塁打を放った。送りバントではなく強行策が実った。試合は引き分けたが、ここには原監督の巧妙な采配があったと現役時代、巨人で活躍し、楽天でヘッドコーチを務めた野球解説者の松本匡史氏は解説する。

 原監督が吉川尚に犠打ではなく「打て」のサインを出した理由について「チャンスでの勝負強さがあり、俊足で併殺打になる可能性が低いからではないか」と分析した。

 その直前、福谷は初球を投げる前に、一度プレートを外し、二塁に投げるふりをして二塁走者を牽制している。そして、吉川尚は打席の中で、左手でバットの中央部分を持ち、バントをするそぶりを見せていた。だが、初球の打席では普通に構え、バントをすることなく、真ん中に甘く入ってきたボールを強振。打球は右中間を破る三塁打となり、試合を一時、ひっくり返した。

「初球は打てのサインだったと思います。吉川尚がバントをするような動きを見せたのはフェイント。吉川尚はああいう場面で勝負強くなってきているし、足が速いから併殺打になる可能性も少ない。だから初球は打たせてみようとなったんだと思う。そんなベンチの期待に勝負強い吉川尚が応え、甘く入ってきた球を思い切りよく振った結果です」

 0-1の投手戦で試合は終盤の8回。無死一、二塁の場面なら、送りバントで走者を進め、1死二、三塁から確実に1点を奪い、まずは同点を狙うという考え方もある。だが、巨人ベンチは違った。捕手のミットは外角構え。福谷はこの日、失投は非常に少なかったが、吉川尚への初球は真ん中に甘く入った。

「セオリーとしては、あそこは送りバントをする場面。中日バッテリーも送ってくるだろうと思っていたはずです。中日はアウトが欲しいし、早めに追い込みたい場面。巨人には、中日は気持ち的にもストライクからくるだろうという読みがあったのではないでしょうか。中日バッテリーはバントだろうと決めつけていたから、結果的に甘く入ってしまったのもあると思う。その証拠に、続く重信、大城に対してはものすごく厳しい球で勝負にいった。打ってくると思ったら、普通はそういう形で入るものです」

 相手の裏をかく意外性のある采配で、結果的に2点を奪った巨人。勝ちこそ逃したが、指揮官として川上哲治氏の持つ1066勝という記録に並んだ百戦錬磨の原監督の積極采配が光った、この日のドローゲームだった。

【動画】実況も予想外の強行策に「打ってきたー!」と絶叫 巨人吉川尚が原監督の期待に応えた適時打の実際の映像

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