「采配せず勝つ試合が一番」 巨人原監督の“側近”が語る1067通りの喜怒哀楽
“偶然の勝ち”と“采配の勝ち”は喜ばない、原監督の勝利学
巨人・原辰徳監督が通算1067勝で、川上哲治氏の球団記録を更新し、歴代最多勝利監督となった。指揮1年目の2002年から原監督のもとでチーフスコアラーとして、共に勝利の喜びを味わってきた三井康浩氏も万感の思いでこの勝利を見届けていた。18年前の初勝利から、積み上げてきた勝利ひとつひとつに喜怒哀楽の“表情”があったいう。
監督1年目の時、当時スコアラーだった私に「一緒に頑張ろう」と声をかけていただきました。巨人でも、そして2009年のWBCでも監督と一緒に多くの勝利を味わえたことは忘れられない思い出です。
絶対に優勝をしないといけない――。いつも監督はそう思わせてくれました。とにかく、データ、分析について信用してくださったし、任せてくれました。それに応えないといけないという毎日でした。
偶然で勝った時の試合後は、あまり機嫌は良くなかったですね。結局のところ、チャンスを潰して、相手のミスに乗じて勝っている。自軍の選手が自己犠牲できず、力を発揮できない試合展開での白星には喜びません。
それは指示を徹底できなかったスコアラーの責任でもあります。そういう試合で勝っても、監督は“ささっ”とシャワーを浴びて、監督室から帰路につく。いつもは私たちスコアラーのいた資料室の前を通って「お疲れさん!」と声をかけてくれますが、それがないことも……。ただの勝ちはダメということ。内容にこだわる。そうしないと次の日につながらないという考えでした。
監督の采配で勝つ試合も多かったです。最近もその手腕には磨きがかかっているように思えます。ただ、あんまり自分の采配で勝った試合は喜ばないんですね。監督が試合を動かして、点が入った時は至ってクール。一方で、選手が頑張って勝った時は、裏で感情を表に出していましたね。
もう、逆転ホームランで勝った試合なんて、満面の笑みで喜んでいました。あれだけ監督が喜んでくれたら、選手としては、やりがいがある。ベンチの監督の仕草は影響力があります。また、中継ぎをつぎ込んで勝ったゲームは「しんどかったな」ときつそうな表情をしている時もありましたね。
喜怒哀楽がはっきり出ていた1067勝。ものすごい数字ですが、1067勝分の喜びと苦悩があったと思います。毎日、野球のことを考える人ですから。その中で一緒にやれた時間は自分の誇りです。おめでとうございます。
(三井康浩 / Yasuhiro Mitsui)
プロフィール
三井康浩(みつい・やすひろ)1961年1月19日、島根県出身。出雲西高から78年ドラフト外で巨人に入団。85年に引退。86年に巨人2軍サブマネジャーを務め、87年にスコアラーに転身。02年にチーフスコアラー。08年から査定を担当。その後、編成統括ディレクターとしてスカウティングや外国人獲得なども行った。2009年にはWBC日本代表のスコアラーも務めた。松井秀喜氏、高橋由伸氏、二岡智宏氏、阿部慎之助選手らからの信頼も厚い。現在は野球解説者をしながら、少年野球の指導、講演なども行っている。2月8日に初著書「ザ・スコアラー」を上梓。
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