阪神・藤浪に見えた一筋の光明…専門家が指摘する緊急昇格の“ケガの功名”とは?
元オリックス監督の森脇浩司氏が藤浪の7年ぶり救援を解説
■ヤクルト 2-1 阪神(26日・神宮)
阪神は26日、敵地・神宮球場でヤクルトに1-2で競り負け、3連敗を喫した。前日25日に新型コロナウイルス感染者を含む10選手を一気に抹消してから黒星が続いたが、1軍に緊急昇格した藤浪晋太郎投手の投球には、一筋の光明が見えた。2014年にオリックス監督として低迷していたチームを2位に押し上げ、ソフトバンク、巨人、中日でコーチを務めた森脇浩司氏が分析した。
1-1の同点で迎えた5回。阪神ベンチは3か月ぶりの先発のガンケルを諦め、藤浪にスイッチ。藤浪のリリーフ登坂は2017年のクライマックスシリーズ・ファーストステージ第3戦以来で、公式戦ではルーキーイヤーの13年以来7年ぶりだった。PCR検査で陽性判定が出た4選手、その濃厚接触者とされた2選手、陽性となった選手と会食を共にしていた4選手が一気に出場選手登録を抹消される非常事態でなければ、藤浪が試合の途中からマウンドに上がることも、そもそもこのタイミングで1軍に昇格することもなかったかもしれない。
森脇氏は「藤浪は今回、機が熟して1軍に昇格したわけではない。しかし、そういう状態で1軍のマウンドに上がるからこそ、“絶好調でなくても打者を抑える術(すべ)”を覚えるチャンスがある。リリーフを経験することで、思考も変わる。先発の時と違って、余分な力が抜けるかもしれない。全てをポジティブにとらえるべきでしょう」とみる。
5回は投手のスアレスと坂口から連続三振を奪い、続く青木には153キロの速球を中前へ打ち返されたが、山田を152キロで中飛に仕留めた。6回には、先頭の村上にバックスクリーンを越える18号ソロを被弾。後続の3人で抑え、2回2安打3奪三振、無四死球1失点の上々の出来で降板したが、村上の1発が決勝点となったため、今季6敗目(1勝)を喫した。森脇氏は「村上以外には投げ勝っていた。やはり能力が一級品であることは誰もが認める通り」と評した。
森脇氏は低迷していたオリックスの監督に就任した際、「“ピンチはチャンス”という言葉もあるが、上を目指す者、チームにとっては、全てがチャンスでしかない。そう考えるところに変化、進化が生まれる」と訴えたという。藤浪の現状にも当てはまる言葉ではないか――。緊急昇格が吉と出れば、まさにケガの功名といえる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)