巨人・松原は「坂本を彷彿とさせる」 分析のプロが語るスコアラー泣かせの魅力とは

巨人・松原聖弥【写真提供:読売巨人軍】
巨人・松原聖弥【写真提供:読売巨人軍】

「2番・右翼」でスタメン、2本の三塁打含む4打数3安打1打点の活躍

 育成出身の巨人・松原聖弥外野手の成長ぶりが目覚ましい。27日に本拠地・東京ドームで行われた中日戦では「2番・右翼」でスタメン出場し、三塁打2本を含む4打数3安打1打点。7月25日にプロ入り後初めて1軍登録された25歳が、わずか2か月でレギュラーの座を射止めようとしている。巨人で22年間にわたってスコアラーを務め、その後も査定室長、編成本部統括ディレクターなどを歴任した三井康浩氏は「対応能力の高さは、坂本が台頭してきた頃を彷彿とさせる」と現キャプテンになぞらえて称賛する。

 セールスポイントは俊足だが、173センチ、72キロの小柄な体形ながら左打席から意外なパンチ力も発揮する。この日は初回無死二塁で中日の先発左腕・松葉が投じた初球の外角高めの速球をたたき、打球は左中間フェンス最上部のネットを直撃。いったんは本塁打と判定された当たりはリプレー検証の末に三塁打となったが、先制点をもたらす貴重なタイムリーとなった。

 2点リードの5回には2死から中前打で出塁し、岡本の適時打で生還。7回にも右越えの三塁打を放ち、丸の投手強襲安打でホームを踏んだ。バットでの貢献で、チームは5-1で勝利。優勝へのマジックを24に減らした。

 仙台育英高、明星大をへて、育成選手として入団し3年目。2018年7月に支配下登録を勝ち取った後は、なかなか1軍の壁を破れなかったが、今年7月25日に初めて1軍登録されると、その日のヤクルト戦で初出場・初打席・初安打をマーク。初めてスタメンに名を連ねた8月18日以降は、37試合中33試合で先発起用されている。27日現在で打率.262、2本塁打、10打点、6盗塁。ここにきて、とんとん拍子の出世ぶりを見せる。

 俊足で左打ちの2番打者タイプといえば、巨人でも過去に少なくなかったが、三井氏は「松原はひと味違う」と見る。「2番タイプの左打者は、内野安打を稼ごうと“走り打ち”になりがちで、いったん感覚が狂うと修正がきかない。松原の場合は、バットをしっかり振り切れるところが魅力。この日、最初の三塁打は初球、2本目はカウント3-0から打ったもので、その積極性も“買い”です」と評する。

 さらに「高いレベルの舞台に放り込まれても、あっという間に慣れてしまう。対応能力の上げ方が素晴らしい。坂本が台頭してきた頃が、こんな感じでした」とも。坂本は1年目の2007年、18歳にして中日との延長戦に代打で登場すると、プロ初安打を決勝適時打で飾ってみせた。翌2008年には、松井秀喜氏以来の10代開幕戦スタメンを果たし、全144試合に出場。松原の躍進ぶりは、そんな坂本を思い出させるというのだ。

「“スコアラー目線”でいえば、今の松原には弱いコース、球種が見当たらない。脆さがない。分析に時間がかかる選手です」と三井氏。このまま一気に、レギュラーの座を不動のものにしてしまうのだろうか。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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