鷹・周東は「もったいない」 盗塁王2度の専門家が語る“足を生かす”打撃意識とは

ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・周東佑京【写真:藤浦一都】

巨人の1番打者として活躍し“青い稲妻”の異名を取った松本匡史氏が解説

■ソフトバンク 4-1 楽天(1日・楽天生命パーク)

 ソフトバンクは1日、敵地・楽天生命パークで楽天に4-1で逆転勝ちし、首位の座を守った。「1番・二塁」でスタメン出場した周東佑京内野手は3打数1安打で、リーグトップとなる今季27個目の盗塁を決めた。24歳で若鷹軍団のリードオフマンに定着しつつある周東の強みと課題を、かつて巨人の両打ちの1番打者として活躍し、盗塁王に2度輝いて“青い稲妻”の異名を取った松本匡史氏が探った。

 周東はこの日、3回1死から楽天先発・岸の伝家の宝刀カーブをとらえ、中前打で出塁。続く中村晃の2球目にスタートを切ると、捕手・下妻は送球を焦ってボールが手につかず、悠々と盗塁を決めた。リーグ2位の日本ハム・西川に4差をつけ、初の盗塁王獲得へ快走している。これまで課題とされていた打撃でも、9月の月間打率.309をマーク。1日現在、今季トータルでも打率.250まで上がってきた。

 足だけでなく打撃でも徐々に存在感を見せてきた周東だが、松本氏は凡退した初回の第1打席と6回先頭での第3打席に疑問を感じたという。初回は、岸の初球の内角高め145キロ速球を打ち上げ、遊飛。6回も岸に対し、カウント0-1からインハイの速球に手を出し、捕邪飛に倒れた。

 松本氏は「初球から打っていく積極性は周東の持ち味で、一概に悪いとはいえない」とした上で、「私は巨人の1番を任されていた頃、1回の第1打席では、2ストライクを取られるまでは打ったことがありませんでした。1回は相手の先発投手に1球でも多く投げさせ、なるべく多くの球種を投げさせて、観察したことを他の選手に伝える役割があると考えていましたから。1回以外でも、初球から打つことはほとんどありませんでした」と振り返る。当時の各球団の1番打者の中では、1979年に33試合連続安打の日本記録を樹立した広島の高橋慶彦氏が周東と同じく、初球から打っていくタイプだったという。

 左打ちの周東に対し、松本氏はもともと右打ちで、プロ入り後に左を猛練習しスイッチヒッターとなった。「そういう事情もあって、特に左打席では、私は徹底的にゴロを打とうとしました。足を生かして内野安打を稼げれば上等でした」。その松本氏の目には、現状の周東の打撃スタイルは「もったいない」と映る。

「相手の内野手は、周東にゴロを転がされただけでプレッシャーがかかる。逆にこの日のように、若いカウントからフライを打ち上げてくれたら、これほど楽なことはない。初球から打っていくにしても、狙い球を絞り、フライになりやすい高めの球には手を出さない心構えを持った方がいいのではないか」と提言する。

「盗塁の技術は文句なし。スピードはもちろん、思い切りよく素晴らしいスタートを切っている。盗塁以外の走塁も、状況判断が的確でうまい」と評する松本氏。球界随一の韋駄天である周東には、歴史に残るリードオフマンとなるのに十分な潜在能力がある。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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