西武・山野辺は「ラッキーボーイ」 辻監督が称賛した“強運男”の課題とは
今季は代走出場が主だったが、ロッテ3連戦では大活躍した
■西武 7-4 ロッテ(22日・メットライフ)
パ・リーグ3位の西武は、22日までの2位ロッテとの3連戦に3連勝。ロッテとのゲーム差を3に縮め、残り16試合にして、大逆転でのクライマックスシリーズ(CS)進出がにわかに現実味を帯びてきた。この3連勝全てに貢献し、突如存在感を増したのが、プロ2年目・26歳の山野辺翔(やまのべ・かける)内野手である。
「山野辺って誰?」と思ったファンもいただろう。神奈川・桐蔭学園高、桜美林大、三菱自動車岡崎を経て、ドラフト3位で入団。1年目の昨年は、1軍では9試合出場にとどまったが、2軍のイースタン・リーグで29個の盗塁を量産しタイトルを獲得した。今季は開幕から1軍にいるが、出場は44試合、スタメンは12試合に過ぎず、代走での出場が主で、これまで目立った活躍はなかった。
この3連戦は、全戦「9番・二塁」で先発。間違いなく“持っていた”。20日の1戦目は、両軍無得点の7回無死一塁で、ロッテ・石川のボール気味のカットボールを右前へ運び、ヒットエンドランを成功させ、続く金子の先制右犠飛につなげた。さらに同点に追いつかれて迎えた9回2死二塁で、放った打球は平凡な内野フライに見えたが、相手の二塁手と右翼手が交錯して落球し、まさかの“サヨナラ打”に。生涯初のお立ち台に上がったのだった。
21日の2戦目は、1-1の9回2死一、二塁で右前へサヨナラ適時打を放ち、「正真正銘」のヒーローになった。もっとも、この試合では1回の守備でも、1死一塁で清田の二ゴロを前進して捕球した際、走ってきた一塁走者の荻野と衝突。荻野の守備妨害と判定され、アウトとなった時から、幸運のオーラを放っていた。
そして22日の3戦目。さすがに何事もなく終わるかと思いきや、2点リードで迎えた8回の守備で見せ場が待っていた。無死一塁で中村奨のファウルフライを好捕。そのまま一塁側に張り出したフィールドビュー・シートに飛び込みそうな勢いで、一塁走者の福田秀がタッチアップ。ところが、山野辺の体はフェンスの上に張られた防球ネットに跳ね返され、即座の送球で福田秀を二塁寸前でタッチアウト(併殺)に仕留めたのだ。辻監督は「ラッキーボーイ! あのプレーは本当に大きいよ。(投手の)森脇を助けた」と称えた。
山野辺が「辻監督から『一日一善』といわれています」と明かす通り、この3連戦は全戦何らかの形で貴重な働きをした。辻監督は「毎日、課題を持って練習に取り組む姿がある。打撃ではコンパクトに振りきれている」と評価する一方、「守備ではまだまだ、『えっ!?』というプレーがいくつもある」とも。指揮官自身、現役時代はゴールデングラブ賞8回を誇る名二塁手だっただけにハードルが高い。
それでも、背番号「4」を背負う男の必死のプレーは、奇跡のCS進出を狙うナインを鼓舞。辻監督も「試合でうまくなるということもある。この緊張の中でプレーすることが、成長につながっていくと思う」と語っており、当面山野辺をスタメンで使わない手はないだろう。