短縮シーズンですでに10完投の異常さ…中日・大野雄、投手分業制に“逆行”した凄み

中日・大野雄大【写真:福谷佑介】
中日・大野雄大【写真:福谷佑介】

両リーグ通じて圧倒的な完投数 2位タイの菅野・西勇・有原の3完投と7差

■中日 1-0 DeNA(22日・ナゴヤドーム)

 中日のエース大野雄大投手が22日、本拠地でのDeNA戦で2試合連続の完封勝利を挙げた。連続イニング無失点を45回まで伸ばし、1956年に大矢根博臣がマークした球団記録の40回1/3を大きく更新。歴代でも1966年の巨人・堀内恒夫氏を抜き単独9位となった。ここまで18試合登板で驚異の10完投。さらに6完封と圧倒的な数字を誇る。近年のプロ野球界では投手分業制が進む中、「先発完投型」の凄みは群を抜いている。

 この日のマウンドも、抜群の安定感だった。7回まで二塁を踏ませない投球。先頭打者に出塁を許した4回と5回は即座に併殺を奪ってみせた。8回は2死から二、三塁のピンチを招くも、最後は楠本を空振り三振に。終わってみれば、6安打完封。初回にもらったわずか1点で十分だった。

 白星こそ13勝を挙げている巨人・菅野に3差をつけられているものの、防御率1.79は12球団トップ。何より10完投は、両リーグ通じて次点の菅野、阪神・西勇、日本ハム・有原の3完投に3倍以上の差をつけ、完投率は実に55.6%に上る。

 先発・中継ぎ・抑えと投手分業制が確立された近年。過去5年で、シーズン10完投したのは2018年の菅野のみ。その年は27試合に先発し、完投率にすると37%だった。過去10年に広げても、2013年のオリックス・金子千尋の10完投(29先発)、2011年の楽天・田中将大の14完投(27先発)、2010年の日本ハム・ダルビッシュ有の10完投(25先発)を加えた4人。もちろん中継ぎ陣の台所事情や打順の巡りなども影響してくるが、完投自体が少なくなってきている潮流に“逆行”するような大野雄の完投能力は余計に目立つ。

 沢村賞の選考基準のひとつにも「10完投」が設けられている。近年の投手起用法ではなかなか達成が難しく、議論を呼んでいる項目でもある。今季は新型コロナウイルス感染拡大の影響で120試合に短縮されたため、そのまま当てはめることは難しいが、すでに大野雄は従来の基準をクリア。昨季、巨人・山口と有原が完投数と投球回を懸念点に受賞を逃したことを考えると、完投数の重みはさらに増してくる。

 中日は残り14試合。通常のローテーションで回れば、大野雄には残り2~3試合のマウンドが用意されそうだ。シーズン最後まで、もしひとりでマウンドに立ち続けることがあるようならば、投手にとって最高の栄誉である沢村賞に近づく可能性はある。

(Full-Count編集部)

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