「プロに行くとは…」 元中日ドラ1の“恩人”が語る広島1位・栗林良吏の進化録
山内コーチの助言で広がった投球の幅…3年秋のリーグ戦ではノーノー達成
その効果は抜群だった。それまでは、カウントを取るのも抑えるのも直球とスライダー。そこにカーブが加われば、打者は初球の入りを見るようになり、見逃しが増える。そうなると、簡単にストライクが取れるようになる。横の変化だけだったのが、カーブが加わったことで低いボールでも空振りが取れるようになり、投げられるイニングも伸びていった。
以前は、追い込んだ後は、右打者だけでなく左打者に対しても、スライダーで三振を奪うしかなかった栗林。だが、左打者からスライダーで空振りを奪うのは簡単ではない。そこで、左打者からは三振を奪うため、右打者に対しても選択肢を増やすことで決め球としても使えるようにするために、フォークも加えた。
「それまでは、どの打者も追い込まれるまでは直球待ち。追い込まれたらスライダー待ちで、直球が来たらファールで粘る。本当にイノシシみたいに直球、直球で突っ込んでいく投手だった。ただ、それだとポイントを押し込んでファールにはなるが、直球だけだとなかなか決着がつかない。でも、相手が直球待ちでも直球で打ち取れる、スライダー待ちでスライダーでもいける投手だったので、打者に球種の選択肢が増えれば、もっと結果が変わってくると思った」
実際、打者の反応は大きく変わった。山内コーチは言う。「投手対打者で見た時に、明らかに投手が有利になった。今までは力対力だったのが、打者が『この投手は何投げてくるんだろう?』という感じで球を見るようになりました」。
そして3年秋のリーグ戦、中京大戦で栗林はノーヒットノーランを達成する。
「ノーヒットノーランって、周りが気遣って黙っていて、言うと打たれることが多いじゃないですか。栗林のデリケートな性格を考えると、意識しだして、打たれる可能性がある。終盤になって言いにくくなるのが嫌だったので、早めの3回終了時点で『狙っていけ』と言ったんです。意識したことで打たれるだけでなく、試合にも負けてしまったら意味がない。でも、早めに言ったことで気持ちもブレることなく、空振りも取れていた。早めに言ったことが結果的に良かったですね」